ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2010-06-10 00:00
(連載)金正日の「崩壊カード」に手を焼く中国(2)
田村 秀男
ジャーナリスト
中国側の貿易統計によれば、中国の対朝輸出は2009年までの5年間でほぼ倍増した。この半面で、北からの対中輸出は伸び悩んでおり、中国側の出超額は年間で11億ドル以上に上る。中国が輸出するのは原油や食料など必需品が多いが、北からの対中輸出は石炭や鉄鉱石など資源が中心である。中国企業は 北の鉱山開発を手がけて、輸入しているが、道路や電力などインフラが整わず、数量には限度がある。そこで対中貿易赤字の北朝鮮が中国産品の輸入を増やすためには外貨が必要になる。
この外貨補填の役割を担ってきたのが韓国企業である。南北間の貿易総額は09年7億4000万ドルで、中朝の26億8000万ドルの3割にも満たないが、外貨供給の点で韓国の役割は大きい。韓国の大手日刊紙『朝鮮日報』によれば、韓国は輸入や委託加工費などで少なくても年間3億2000万ドルの外貨を北に流し込んでいる。これに、統計上は出てこない非公式の対北支援が加わる。北朝鮮貿易総額のうち53%を中国が、15%を韓国が占めている。韓国が公式、非公式の資金源となって北の対中貿易赤字のかなりを補填してきた計算になる。
ところが、「天安」事件に伴う韓国側の制裁で、こうした資金の流れが止まってしまうことになる。すると、北朝鮮が必要とする中国産品の輸入余力はますますなくなる。おまけに日本は対北送金規制を強化し、米国も金正日直轄の「首領企業」の海外秘密口座の封鎖を検討しており、実行されると北は金融面でますます干上がってしまう。とどのつまりは、中国に対して経済支援を増やしてもらう以外、生き延びる方法はない。金正日はこれから、前にも増して「崩壊カード」を北京に突きつけて、原油や食料、その他生活必需品、工業製品の提供を求めることになるだろう。
こうみると、北京は国際社会の対北制裁に同調することはありえない。むしろ、国際社会が対北の締めつけを強くすればするほど、中国は国際世論に背を向けてまで北への支援を強化するしかない。そうした流れからすれば、北朝鮮は実質的に中国の保護領と化すように見えるが、金正日側は「主体思想」という鎧で身を固め、「崩壊カード」によりあたかも中国側が「従」で平壌が「主」であるかのごとき倒錯関係を演出しているのが妙だ。(おわり)
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会