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2010-06-04 00:00
紛争処理機能を果たしつつある日中韓首脳会談
石垣 泰司
アジアアフリカ法律諮問委員会委員
鳩山総理と小沢民主党幹事長のダブル退陣によりわが国政局は、またもや新たなるリセットに直面し、若干の混乱も免れないこととなったが、次期民主党政権の対外政策が幾分なりともこれまでより国民の期待に答え、各国の信頼を取り戻すものとなる、と考えてよいものか期待と不安が交錯している。 その一方、東アジア地域においては、先般来の韓国哨戒艦の沈没事件をめぐり、沈没原因が韓国側の國際的専門家チームの調査により北朝鮮潜水艦の発射した魚雷によるものと断定され、対抗措置がとられた。これに対し、北朝鮮が強く反発し、戦時体制に入る構えを宣言したことにより、朝鮮半島は、一気に一触即発の危機下に置かれたままとなっている。ちょっと前まで盛んに論じられていた6者協議再開の話は、どこかに吹っ飛んでしまったような観がある。
世界の次の関心は、国際社会として北朝鮮の行為を非難し、同様事件の再発を防止するための適切な措置をとるための、国連安全保障理事会が遅滞なく招集され、実効的措置が実際にとられるかどうかに移っている。そのような中で注目されたのが、最近韓国済州島で開催され、本問題を中心的議題としてとりあげた日中韓3国間の協議である。周知の通り、日中韓首脳会議は、従来ASEAN+3首脳会議や東アジアサミット(EAS)の折りに短時間開かれていたものが、2008年12月麻生政権時代に福岡でASEAN首脳会議とは無関係に、独立して第1回目を開催して以来、3国間の持ち回りで、毎年1回開催されているものである。従って、今回5月29、30日開催された第3回日中韓首脳会議は、開催期日、開催場所とも前もって決まっていたもので、今回は周到に事前に5月15日済州島で3国外相会談も開催された。
今回の日中韓首脳会談は、直前の5月20に韓国哨戒艦事件の調査結果が発表されたことから、同事件への対応が最重要議題となり、真剣なやりとり、協議が行われた模様である。韓国は、安保理で審議し、適切な措置をとることが必要であるとし、日本もこれを強く支持し、中国に対し協力を要請したのに対し、中国は、慎重、冷静に対処し、武力衝突の事態を回避する必要を強調したとされるが、本事件がいきなり国連安保理で他の安保理メンバーと論議されるに先立って、地域レベルで、東アジアの主要国である日中韓3国間で協議が行われたことには、大きな意味があり、国連での今後の適切な処理のためにも役立つたものと考えられる。
今回、日中韓3国首脳レベルでこのようなタイムリーな協議ができたのは、上記経緯からこの時期に偶々首脳レベル協議が予定されていたからであるが、日中韓サミットは、今回の会議で「三者間協力事務局」を2011年に韓国に設置することで基本合意し、常設機構化されることとなった。将来、年1回の定期のものに加え、緊急の必要に応じいずれかの1国の要請により臨機応変的に3国協議が招集できるようになり、その実績が積み上げられることとなれば、それは将来の「東アジア共同体」の政治的協議メカニズムとして発展しうることになる。それなれば、それは大きな画期的進展であるといえよう。
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