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2010-05-28 00:00
社民党は「好戦主義」を採るのか?
花岡 信昭
拓殖大学大学院教授
普天間問題はいよいよ大詰めだ。5月28日に日米共同声明と日本政府の決定が出る。「県外・国外」を主張していた鳩山首相もようやく「勉強」を終えたようで、名護市辺野古のキャンプシュワブ沿岸部移設を決断したようだ。だが、日米間の文書では「辺野古」が明記されるものの、政府方針としてはそこをぼかすらしい。いうまでもなく、社民党党首の福島みずほ消費者・少子化担当相が猛烈に抵抗しているためだ。そこで、閣議決定、閣議了解といった閣僚の署名を必要とするものとはしないで、首相発言程度にとどめるのだという。社民党の連立離脱を回避するためというが、社民党にそこまで配慮してやる必要がどこにあるか。参院選での選挙協力に影響が出るということらしいが、連立離脱で困るのはむしろ社民党だ。比例代表での1議席確保(つまり福島党首の分)も難しくなるのではないか。
国家の安全保障という最高の政策の基軸部分で、そういうインチキは許されるのかどうか。ここまできたら鳩山首相はハラを決めるべきだろう。堂々と閣議決定に持ち込む。署名を拒否したら罷免して、社民党と縁を切る。そのことによって、戦後最悪とまでいわれるにいたった日米関係に多少でも好影響が出るかもしれない。だいたいが、社民党の観念的平和論は、冷戦時代の化石といっていい遺物だ。なにやら「米帝打倒」を叫んでいたころの学生運動を思い出す。いま日本にとって必要なのは、日米同盟をいかに再構築し、いざというときにアメリカが来援してくれる体制を築くかというところにある。日米安保体制とは、そういうことだ。アメリカがやられても日本は助けに行かなくていい。日本がやられたときだけ米軍が助けてくれる。だから、国内に米軍基地がある。
社民党の感覚は、厳しくいえば「好戦主義」と紙一重である。日米関係にクサビを打ち込んで、日本の抑止力を弱体化させることに狂奔している。これは、戦争が起きることを望む立場と表裏一体のものだ。日本および東アジアの平和と安定を維持していくには、日米同盟を軸にした確固たる抑止力が決定的に必要だ。国家の安全保障は口先で平和を唱えていても実現するものではない。不断の外交努力、防衛努力の積み重ねによってはじめて担保されるものだ。いまどき、「みずほ流」の感覚が通用するはずがない。鳩山首相はそこを切り捨ててこそ、政権の浮揚力が出てくるのだということを冷静に考えてはどうか。もっとも、この段階で知事会議を開催し、あろうことか、尖閣問題で手痛い失態も演じた首相だ。安保政策の肝心なことをどこまで理解しているかは疑わしい。
尖閣は日本固有の領土であって、そこに領有権をめぐる日中協議を容認するようなものではない。それを鳩山首相は、「日中の当事者間でしっかりと議論して、結論を見出していく・・・」といった発言をしてしまった。これは「尖閣は日本の領土である」という政府方針を覆してしまったことと同じ意味だ。中国はほくそ笑んでいるだろう。こういう首相を擁しているのだから、社民党も安心して連立にとどまることができるわけだ。どういう「茶番シナリオ」が展開されるのか。なんともおぞましい予感がする。
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