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2010-05-19 00:00
真に警戒すべきは、中国バブルの崩壊
田村 秀男
ジャーナリスト
「100年に一度の大津波」(グリーンスパン前米連邦準備制度理事会議長)から世界の金融市場が立ち直りかけていた矢先の「ギリシャ・ショック」である。世界金融危機は、まだ収束からほど遠い。日本はここで何をすべきだろうか。先進国中最高水準の政府債務を持つ日本は、早く財政均衡化の道筋を示すべきであるが、いまここでは、そんな常套句を繰り返しても何にもならない。「市場」という名を騙っては、国債相場をいたずらに激動させて、儲ける者たちや、その手先の評者たちの言も、どうでもよい。いま、日本として最も急がれるのは、中国バブル崩壊に備えた危機管理である。なぜか。
第1に、ギリシャ危機はグローバル金融危機の一環である以上、いつどの国に飛び火するかもしれない。ちなみに、5月7日時点で株価の下落幅が最も大きかったのは、独仏など欧州ユーロ圏だが、上海株価は東欧新興国並みに急落した。ブラジル、ロシア、インドを含めた4大新興国中最悪である。第2に、中国のバブルは異常なまでに膨張しており、崩壊の可能性が極めて高いのと、それが及ぼす世界への影響はギリシャの比ではない、と予想できる。上海株式動向は、ニューヨーク株式を先導する傾向が昨年から強くなっており、上海発世界金融危機が起りうる。第3に、独仏などユーロ圏が中心となって支援体制を組み、国際的な危機管理が可能なギリシャと違い、中国は共産党指導部が国内事情を優先して、適切なバブル・コントロールができない。危機に際しても国際的な協調の枠組みに背を向ける可能性も高い。
中国のバブルは、言わば人民元バブルである。各種統計によれば、人民元のマネー量(現預金の総量=M2)はこの3月末、ドル換算で米国を1兆ドル上回った。米国のGDPの3分の1の中国は、自国のGDPの2倍近くの人民元を垂れ流している。人民元の洪水が、中国の株と不動産市場になだれ込んでいる。特に上海株式は、博打好きな国民性を反映し、いったん下がり始めると、底なしの暴落局面に突入する恐れがある。
「友愛」路線の鳩山政権は、この中国バブルに能天気で、「バブル」とはみなさず、「ブーム(好景気)」だと熱いまなざしを送る。日本の内需にとりこもうというわけで、中国人向けビザの発給を拡大し、日本で大いにショッピングしてもらおうという観点でしか見ない。中国に対して、日本は強い意志でバブル抑制策の実行を迫るべきである。抑制策は、人民元バブルの元凶である人民元の対ドル固定制を改めて、変動制に改革することで、日本は米国と足並みをそろえて、北京に迫るべきだ。
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