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2010-05-13 00:00
(連載)各国政府から相手にされなくなった日本政府(1)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
昨年9月の鳩山政権成立以来、私は「深刻に過ぎる『初期故障』―沖縄基地問題に見る新政権の政治感覚」、「これでは、各国政府は日本政府をまともに相手にしなくなる」などの論陣を張り、鳩山政権の最も深刻な問題は、国の政策に対する考えや首相の発言の「軽さ」であると指摘してきた。その理由として、国の政策に責任を負わない野党時代の気軽さのままで、政治に臨んでいることを指摘し、次のように述べた。この軽さは「根本的には、政治というものに対する、特にシビアな国際関係に対する、リアルな認識の欠如ゆえである。また、首相や閣僚は、国際場裡においては、国益や国家主権を担ってツバぜり合いの真剣勝負をしている、という認識や自覚が欠けているからである」と。つまり、政権交代時の不慣れや過渡期の混乱という問題とは次元を異にする、もっと根源的な危険性を、私は予感していた。真剣勝負で国益や安全保障の問題と取り組んでいる各国政府が、「友愛外交」「命を守る」など雲をつかむようなスローガンを掲げている、ズブの素人のような政権を、まともに相手にするはずがないと懸念したのだ。
残念ながら、これらの懸念はことごとく現実のものになってしまった。鳩山政権の普天間基地問題、高速道路問題、子ども手当その他の政策での迷走ぶりは、もはやまともな政府の体をなしていない。例えば、普天間基地の移設問題では、政府が示唆したいくつかのアイデアは、日本の専門家や米国側からみると、検討にも値しない素人同然の内容であった。そうなったのは、政権の座についた人たちの多くが、これまで安全保障とか軍事について、それが国家にとってどれだけ重大なマターか、まともに考えたことがなかったからだ。また、「官僚に依存しない」と大見得を切って、基地の移転問題であるにもかかわらず、防衛省や外務省の専門家が深く関与するのを排除したからだ。
その結果、基地の軍事的な運用の専門知識や日米間の戦略的、軍事的な合意をまったく欠いたまま、そして無定見に何の具体策も成算もないまま、まるで野球場の移転のように気軽に「県外、国外移設」を唱えた。こうして、長年にわたる日米の政府や沖縄の関係者の想像を絶する努力と住民の苦渋の決断の結果として、まさに「奇跡」(島袋名護市長)のように受入れを決めた名護市辺野古の現行案を、いとも気軽に反故にし、鳩山首相は自ら退路を断ってしまったのだ。八方塞がりとなり、苦し紛れに現政権は、公約の「5月末までの決着」の手前、米側とせめて具体案の協議にでも入るため、結局「辺野古案を多少修正して、米側に提案した」と報じられている。これが事実なら、「県外」で固まった県民感情を逆なですることになり、まさに無責任な迷走である。この唖然とするような稚拙さ、無責任さは、一国の主権を預かる政府としては、到底許されないことだ。
今年3月に米国で行われた核安全保障サミットに36人の各国首脳が出席したが、3月14日、ワシントン・ポスト紙の看板記者が「この大がかりなショーの最大の敗北者は断然、哀れでますます頭がいかれてきている(hapless and increasingly loopy)日本の鳩山由紀夫首相である」とまでこき下ろした。核問題の国際会議でありながら、被爆国日本のトップはオバマ大統領と公式会談もできず、各国首脳からもまともには相手にされなかった。何とかこぎつけたいくつかの首脳会談も、日本側からお願いをして鳩山首相が相手のいる場所にまで出向く形で実現したと言われる。読売新聞によれば、「ブラジル大統領との会談場所に至っては、これまではあり得なかったブラジル大使公邸。時間が余ったから会ってやったという感じだった」という。まさに、各国政府は日本政府をまともに相手にしなくなっているのだ。ちなみに、次回2012年の核安全保障サミットは、広島や長崎ではなく、ソウルに決まった。国内では鳩山政権の支持率が20%台に落ちたが、日本政府の国際的な権威の失墜はさらに深刻だ。わが国の対外関係においてこれが如何に深刻な事態かということも、現政権には残念ながら実感を持っては理解できないだろう。(つづく)
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