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2010-04-28 00:00
米中関係の実情と日本の対応
岡崎研究所
シンクタンク
どの国にも流行の論調というものがありますが、『ニューヨーク・タイムズ』3月31日付掲載のジョージタウン大学のCharles A. Kupchanの米中関係に関する論説は、今の米国論壇における気分をよく表わしています。すなわち、「(1)米中間の対決ムードは憂慮すべきものであり、双方の指導者は早急にこれを緩和する必要がある。しかし、(2)現在の摩擦は、米中双方の基本的国益の対立というより、双方国内の圧力を受けて、売り言葉に買い言葉にならざるを得ないために生じたものだ。また(3)中国は人民元を切り上げるべきであり、それは中国自身の利益となる。ただ、中国は圧力を加えられれば、頑なになるだけであり、米国は圧力を加えるのは止めるべきだ。さらに(4)米国は、中国への技術輸出制限を緩和し、特に環境技術、省エネ面での共同研究・開発を進めるべきだし、これに対して(5)中国は、対イラン制裁強化、インターネットにおける自由の問題で米国に歩み寄るべきだ」と述べ、「米中両国は、まだ地政学上の戦略的対立には至っていない。しかし今のトレンドにブレーキをかけないと、意見の不一致は、やがて危険な対抗関係に変わっていくだろう」と言っています。
カプチャンが言うように、米中関係は戦略的対立関係に至ったわけでは毛頭ありません。ダライ・ラマとの会見や台湾への兵器供与をめぐる中国の反応は、いつものことであり、米中は必ず再びよりを戻すでしょう。今の中国は他国を占領したわけでもなく、また米国とは不即不離の経済関係にあるからです。事実、この10年余、欧米の投資銀行を中心に、中国経済台頭を大袈裟に言い立てては、中国の株価を吊り上げて、利益を収める動きが続いてきましたし、一部の米国製造業にとっては、中国での生産、販売は死命を制するものとなりつつあります。世界金融危機後の金融機関たたきで、一時後退しているものの、1年もすれば金融機関等から対中関係推進の声が再び上がってくるでしょう。
ただ、2012年は米大統領選と中国共産党大会(胡錦涛が次世代指導者に交代すると言われる)の年であり、そのため、米中関係が双方の内政の争点に使われて、対立がエスカレートする可能性はあります。
こうした中で、日本として留意すべきことは、米中両国が対決色を強めても、この間で「バランサー」となる、あるいは漁夫の利を占める動きをすべきではないということでしょう。19世紀のポーランドの如く、2つの強国にはさまれた国は、その両大国がある日突然対立をやめて、手を結べば、分割支配されかねません。また、米国が対中関係で日本に同調を求めてきた場合には、対中関係の悪化を恐れて逡巡する姿勢を示すべきではないでしょう。揺れれば、中国からは軽視され、米国からは突き放されます。と言っても、米国の要請を100%満たす必要はなく、日本自身の安全保障に役立つものは何かを見極めつつ、それについて米国と前向きに協力する姿勢を維持していけばよいでしょう。
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