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2010-04-02 00:00
米国抜きの新たな中南米地域統合機構設立に向けての動き
石垣 泰司
アジアアフリカ法律諮問委員会委員
東アジア共同体構想との関連で引き合いに出される他の地域の地域統合の事例は、いつも欧州連合(EU)であるが、EU以外の地域の地域統合に関連した動きにも眼を離せないものがある。東アジア共同体構想について、鳩山総理は「わが国としては、日米同盟を前提にし、米国が関与するような形のものを探求すべき」ことを示唆してきているが、最近この関連で注目されるのは、中南米地域において、これとは逆に、米国、カナダが参加している既存の米州機構(OAS)とは別に、米国が参加しない中南米地域統合をつくる動きが浮上してきていることである。
2008年12月にブラジルのバイア州で中南米地域の32カ国の首脳が参集した際、米国の支配から自立した地域統合を目指すという「サルバドル宣言」が採択されているが、本年2月23日にメキシコで開催された32カ国の首脳会議は、改めて「ラテンアメリカ・カリブ地域統合」の構築を目指すべき旨確認した。採択された首脳宣言によれば、「民主主義、法の支配、人権の尊重を理念とした本格的地域統合」を標榜しており、明年ベネズエラで開催される首脳会議か、2012年チリで開催予定の同会議で新地域統合機構の設立が決定されることになりそうだという。
もとより中南米地域と東アジア地域は事情を大きく異にしている。上記の動きは、中南米地域で近年進行してきているとされる米国離れの動きと関連したものかもしれない。米国は、中南米地域とは歴史的に深い関係にあるが、地理的にはラテン・アメリカやカリブの一部ではないので、新機構に参加しえない形となるが、かかる動きは、米国にとり到底好ましいものとは言えない。米国務省の同地域担当次官補は、表面的には一応平静を装っているが、米国としては今後種々の働きかけを行うものと予想される。従って、上記の動きは今後紆余曲折を経るとみられるが、東アジアにおける動きとの関連、影響も絶無ではなく、十分注視していく必要があろう。
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