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2010-03-18 00:00
評価される岡田外相の「核持ち込み緊急時容認」発言
杉浦正章
政治評論家
外相・岡田克也の「核持ち込みを緊急時には排除せず」発言と「非核3原則の法制化をしない」との見解表明は、これまで歴代自民党政権ですらタブーとしてきた非核3原則へのハードルを下げたものとして注目される。核持ち込みに関しては、有識者会議の密約報告で、表向きには「核搭載艦船の寄港を認めない」姿勢を示しつつ、「持ち込み可能」とする米側解釈に異を唱えず、寄港を黙認した「暗黙の合意による広義の密約」があったと指摘された。岡田発言は緊急時持ち込みを可能とする米側の主張に歩み寄ったことになる。背景には鳩山政権発足以来悪化の一途をたどっている日米関係修復への配慮があるものとみられる。しかし官房長官・平野博文が早速不快感を表明、社民党も反発必至であり、政権内部の足並みの乱れが今後問題になる。
一連の岡田発言は(1)緊急事態が発生して、核持ち込み、一時的寄港を認めないと日本の安全が守れない、という事態が発生したとすれば、その時に政権が命運をかけて決断し、国民に説明する、(2)非核三原則の法制化については、ロシアや中国の艦船が日本の領海を核を積んで通過しないという担保をどう取るのかという問題に決着がつかないと、法制化は難しい、(3)また日本領海を外国艦船が通過するとき、何らかの条件を付すということが、国際法上認められるか、というものだ。岡田は民放テレビなどでも最近同趣旨の発言をしており、明らかに思いつき発言ではない。確信的な論理構成が見られる。
歴代政権は、これまで非核3原則堅持の立場から「持ち込みを拒否する」との国会答弁を繰り返し、核密約との矛盾が指摘されてきた。岡田は「非核3原則は維持する」としながらも、「緊急事態発生時に内閣が命運をかけて決断する」というのだから、そこには従来の見解からの飛躍的な発想が見られる。つまり、非核3原則を緊急時には核搭載艦船の領海通過・寄港を認める2・5原則とすることにほかならないからだ。観念論から安全保障上の現実路線に転換した形となる。国民新党代表の亀井静も「有事がどういう状態で来るかなんて、誰も想像できない。そういう時には日米両国が合意できることを緊急にやればいい」と述べており、事実上緊急時容認論だ。加えて「3原則の法制化せず」も重要な見解だ。というのも社民党は法制化が党の基本方針であり、首相・鳩山由紀夫は同党党首・福島瑞穂の法制化提案に安易にも同調する考えを表明しているからだ。岡田発言は、米政府の核の存在は明示しないとする国是からいって、法制化すれば日米関係に決定的なダメージが来ることを想定したものであろう。
岡田発言の背景には、まず対米配慮が挙げられる。鳩山政権成立後の日米関係の悪化は目をおおわんばかりのものがある。国務次官補・キャンベルが訪日を突然延期したのは、言われているように日程上の理由ではあるまい。普天間問題での迷走を続ける鳩山政権へのけん制に他ならない。ワシントン・ポスト紙に至っては、3月8日付社説で民主党の国際局長・藤田幸久が9・11同時多発テロの犯人像に疑問を挟む発言をした問題をとらえて「鳩山政権の“反米傾向”を反映している」と断定しているほどだ。普天間移設問題や日米同盟関係の深化を図るには、まず安保の基本に立ち返ってトゲを抜こうとしているのだろう。岡田は29、30両日の主要8カ国(G8)外相会合に先だって、ワシントンで国務長官クリントン、国防長官ゲーツとも会談する意向だが、それに先立つ関係改善へのサインでもあろう。
さらに極東における軍事的なプレゼンスを増大させている中国や、核開発に専念している北朝鮮への抑止効果を狙ったものでもあるだろう。またこれまで自民党政権がタブー化してきた問題も、あえて議論の俎上(そじょう)に載せ、国民的合意を目指すという狙いもある。岡田は「政党レベルで突っ込んだ議論をして欲しい」とも述べている。これは自民党内の核・安保論議にも影響を与えずにはおくまい。しかし、岡田の見解が政権内部や、民主党内論議を経ていないことは、平野が拒絶反応を示していることからもうかがえる。党内にかつての社会党左派や労組出身幹部を抱え、社会主義路線信奉の社民党と連立している中で、場合によっては岡田が孤立しかねない事態も予想される。しかし非核3原則へのハードルを下げ、安保観念論から現実論へ移行することは、日米関係のためにも不可欠であり、岡田発言は歓迎されるべきものであろう。
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