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2010-02-12 00:00
自民に有利な「小鳩疑惑」の長期化
杉浦 正章
政治評論家
民主党衆院議員・石川知裕の離党は、幹事長・小沢一郎の一つ目の防波堤が崩壊したことを物語っている。本丸直撃を回避するため、小沢一郎は何重にも渡る防波堤を築いているが、今後一つずつ崩されてゆくだろう。なぜなら、それらが砂上の楼閣であるからだ。首相・鳩山由紀夫の“脱税”疑惑とも絡んで、今後の攻防は、2、3カ月間の長期にわたる方向だ。これは昨年から指摘しているが、自民党にとって願ってもないチャンスだ。一挙に片付いては、支持率が戻らず、参院選挙に向けて態勢が確立しないからだ。小沢は石川離党について「本人の判断だ」と5回も繰り返し、石川も「小沢との連絡」を全く否定しているが、誰かこれを信ずる者がいるだろうか。
石川離党が小沢自身への責任論としてはね返るのを回避するための姑息(こそく)な糊塗策にすぎない。明らかに12日の衆院予算委集中審議に先立つ駆け込み離党であり、小沢の意を受けた民主党が練りに練った戦術だろう。加えて小沢は、「石川議員個人の形式的なミス」を繰り返し、「国会議員の職務権限に関して責任を問われているわけではない」と強調した。こうした小沢の突っ張り発言を聞く度に、一般国民がどう反応するかについて、小沢は気づいていない。「いやぁ~な感じ」とか、「けじめ無視」とか、「監督責任はどうなるの」とかいった反応が、テレビの前で発言の度に生じているのを、知らないのだ。明らかに世論を読み違えている。
「秘書時代の行為だから、国会議員としての責任は問われない」という強弁は、初めて聞いたが、容易に反論可能だ。秘書時代の悪事隠蔽の積み上げの結果、国会議員になったこと自体が、問われるからだ。また小沢は無所属となる石川被告の活動を支えるよう民主党北海道連の幹部に指示したというが、これこそ語るに落ちた話だ。秘書と一体の党私物化の対応だ。冒頭述べたように、防波堤の1つが崩れたが、小沢の防波堤は二重三重と張り巡らされている。民主党としては例外的措置である石川の議員辞職拒否に始まって、政倫審への出席拒否、議員辞職決議案採決拒否、自らの証人喚問拒否。数えればきりがない。しかし、自民党にとっては防波堤が数ある方が有り難い。マスコミの論調は、もはやその論拠が正義感や道徳観の段階に入ってきており、これを突かれれば突かれるほど、民主党の自浄能力のなさが浮き彫りになる構図だからだ。小沢が容易に突き崩せるものではあるまい。
例えば、2月21日の長崎県知事選に敗れれば、「小沢が悪い」となる構図だ。今後検察審査会が「起訴相当」を議決したり、裁判での検察冒頭陳述、国会での休むことのない「政治とカネ」の追及など、「砂上の楼閣」を崩す荒波は数知れずあり、小沢辞任までやむことはないだろう。自民党はこの追い風を背景に、ツートップの疑惑を追い続ければ、先の世論調査のように薄日が差し始めるだろう。幹事長・大島理森や元官房長官・町村信孝が、予算採決の前提条件として、小沢の参考人招致などを挙げはじめた。例え来年度予算案の成立を遅らせても、ツートップ疑惑を追及する構えだ。これは世論が自らにはね返りかねない問題を秘めており、いわば両刃の剣だが、野党としては予算人質批判と小沢追及のバランスを見極めることになろう。産経新聞によると11日、日光市内のパーティーで演説した小沢に、「辞めろー!」とヤジが飛び、会場は一瞬静まりかえったという。「党内の声なき声を代弁するかのようで、かえって痛烈に響いた」とのことだが、小沢にとって最大の生き甲斐である選挙運動でこうした反応が出始めると、確実にボディブローとして利いてくるだろう。
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