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2010-02-05 00:00
米国の新アジア太平洋政策の注目すべき5点
石垣 泰司
アジアアフリカ法律諮問委員会委員
鳩山政権の対東アジア政策が総理の施政方針演説および外相の外交演説の中でどのように具体的な形で語られるかに関心があったが、特に突っ込んだ新たな考えが示されることはなかった。他方、米国については、ブッシュ政権時代には、東アジアの地域的協力の推進の動きに対しては、APEC関係を除き、殆ど関心が示されることはなかったが、オバマ政権発足1年を経て、漸く米政府の対アジア太平洋地域政策についてかなり具体的な考え方が明らかにされるに至った。
「百花斉放」欄への投稿の中で鍋嶋敬三氏も言及されている1月12日クリントン国務長官のハワイ演説は、東アジア太平洋地域についての米政府の基本的アプローチ、考え方のみならず、近年設立された東アジア・サミットや上海協力機構を含む諸新組織に対する考え方についても詳細にわたり示しており、極めて注目に値するものである。同演説は、クリントン長官の地域関係諸国訪問を前に、アジア太平洋に面したアカデミック拠点の1つで、オバマ大統領とのゆかりも深く明年APEC首脳会議の開催地ともなるハワイ・ホノルルの東西センター(East-West Center)で、その設立50周年記念をも勘案して、アジア太平洋地域における多国間協力に焦点をあてて、発表されたものである。主要邦字紙は、同じ日ホノルルで行われた岡田外相とクリントン長官の普天間移転等の日米間の2国間問題に関する協議に主要スペースを割いたこともあり、同演説については詳しく報じなかったのが残念であったが、とくに次の5点について言及のあったことが注目される。
その第1は、米国の政策の基盤には、米国の将来がアジアの将来と直結しており、アジアも米国が地域内にダイナミックな経済的パートナーとしてとどまり、安定的軍事的影響力を持ち続けることを望んでいるとの認識があること。第2は、東アジアの戦略的核心的事実として、この地域が中国、インドといった台頭しつつある諸国、韓国、日本、豪州のような伝統的指導的諸国、影響力を増しつつあるインドネシアのような東南アジア諸国から混成されており、米国としては、これら諸国と永続的2国間関係を維持するだけでなく、これら諸国およびこの地域が直面する諸困難に対処するうえで中心的役割を果たしていきたいと考えていること。第3は、米国がこの地域における地域的機構との関わりの中で、指導力を発揮していくつもりであり、そのためには(1)日本、韓国、豪州、タイ、フィリピンとの同盟関係、(2)地域的機構における安全保障、経済拡大、民主主義・人権面の重視、(3)地域的機構の運営は、効果的で、結果を生み出すものであるべきこと、(4)柔軟性に富んだ多国間協力、(5)アジア太平洋地域協力枠組みづくりに米国を含む主要国が参加すべきこと、の5つの原則が重要であること。
第4は、安全保障に関連して、米国としては、ASEAN地域フォーラム(ARF)の強化を働きかけていくとともに、6カ国協議、メコン下流諸国との協力を推進し、3国間協議に関しては従来よりの日米豪、日米韓に加え、さらに日米中、日米印間の協議をも歓迎したいということ。第5は、ARF、ASEAN+3、上海協力機構を含む多数の新たな地域機構が設立されているなかで、米国としてはできるだけ多くの機構に参加したいと希望しており、東アジア・サミット(EAS)については、米国として如何なる役割を果たしうるか、またEASがより広汎な機構の中でどのように位置づけられべきか、また東アジア地域における主要な会議の期日が関係者の都合に合致するようにどのように効果的に調整されるべきか、等について関係国と協議して行きたいということ。
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