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2010-02-03 00:00
「小沢不起訴」でも、政治責任は問われる
杉浦 正章
政治評論家
どうも首相・鳩山由紀夫の小沢擁護の口調が2月2日、「当然参院選を仕切ってもらう」と断定的になって来たから、臭いと思っていたが、捜査当局または小沢からの「不起訴」情報があったのだろう。3日付朝日、毎日両紙が「小沢氏不起訴の方向」とトップで報じている。本当にそうなら衝撃的なニュースだ。秘書の拘留期限を明日に控えて秘書らの起訴は行われるが、焦点の小沢が不起訴と踏み切った記事を間違えば、編集局長のクビが飛びかねない話だ。しかし起訴が秘書だけだからといって、小沢の政治的、道義的責任が消滅することはない。鳩山の政治音痴の決定的な部分は、それを分かっていないことだ。まさに首相の道徳律が問われるのであり、火がついた野党や民主党内の反発がおさまることはないだろう。
おそらく「不起訴情報」は、鳩山と、小沢側近の参院議員会長・輿石東と、場合によっては職務上知り得る立場にある法相・千葉景子くらいしか知るまい。鳩山らは、明らかに発言が自信に満ちていた。鳩山は2日午前と午後2回にわたって「当然」という言葉を口にしている。「今日までの幹事長の活動を考えれば当然、参院選挙を仕切ってもらいたい」「参院選を仕切ってもらう。それは幹事長だから当然のことだ」の2回だ。この時点で断定的な表現ができるのは、情報があったからに違いない。輿石も「必ず皆さんに分かってもらえる日が間もなくくる」と意味深長な発言をしている。千葉は「刑事責任を問われることは重い」とだけ述べているが、これはフェイントだろう。おそらく千葉も情報を得て、首相に報告しているのだろう。
朝日が報ずるところを要約すれば、(1)秘書の石川知裕が一貫して小沢の関与を否定しており、関与の証拠不十分、(2)水谷建設からの5000万円についても、小沢の受け取っていないとする主張を覆す証拠を得ていない、(3)虚偽記載の謀議に小沢が加わっていたとする供述は得られなかった、というものだ。共同通信も3日未明「小沢氏、不起訴の公算:東京地検、現状では立証困難」と報じた。小沢が1日の記者会見で「刑事責任を問われることは想定していないが、もしそういうことが仮にあるとすれば、責任は重い」と述べたのは、不起訴なら幹事長続投の意思表明であったことになる。
秘書の起訴も3人全員か2人になるかはまだ判然としないが、石川知裕と大久保隆規の起訴はまず間違いないとみられる。小沢を起訴しないということになれば、散々立件の可能性を示唆し続けた検察の情報操作とマスコミの報道ぶりが問われることになる。しかし1人は国会議員である秘書らが起訴されて、自らの関与が極めて強いとの疑惑がある小沢が、法的に「不起訴」であることだけを盾にこの急場を切り抜けられるだろうか。また最高の道徳律を求められる首相が、やはり「不起訴」を金科玉条の盾として「幹事長続投」の判断を下すことで、国民の納得を得られるだろうか。いずれも事件への感覚が甘い。とりわけ鳩山は、自らの脱税疑惑といい、倫理観の欠如がいかんともしがたい。マスコミの追及もゆるむことはまずない。
いまや反小沢の急先鋒となった元衆院副議長・渡部恒三は、小沢が起訴されなかった場合でも「政治家は、国民の指導者だ。法に触れていないから問題ないとは言えない。道義的責任もある」と述べ、国民世論の重要性を指摘している。国土交通相・前原誠司も「新たな局面が生じた場合は、総合的に判断して自浄能力を発揮する必要がある」と述べている。もちろん自民党など野党は、秘書の起訴でも追及の手を緩めることはない。今後小沢本人の参考人聴取、石川の議員辞職勧告決議案などをテコに、追及を強めることになろう。自民党にとって見れば、小沢留任が長引けば長引くほど、民主党の支持率低下につながり、かえって有り難いこととなる。
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