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2010-01-21 00:00
いわゆる日中米「三角形」論について
吉田 重信
中国研究家
日中米「三角形」論が盛んに唱えられている。しかし、主張の内容は論者によって違う。「正三角」でなければならないと説く論者も、それでは具体的にどう実現するか、という点になると定見がない。この点は、現在の民主党政権でも、これを補佐する外務省においても同じである。『文明の衝突』を書いたハンティントン教授にいたっては、やがて日本は米国の衰退をみて中国にくっつくだろうと予測し、日本をコウモリになずらえてその頼りなさを揶揄しているようだ。
日本にとり、はっきりしていることは、最悪のシナリオは、アジア太平洋戦争の際に現出した、米中提携(当時は広く「ABC対日包囲網」といわれた)による対日対抗である。日本はかかる包囲網によって戦争に敗れたのである。したがって、かかる悪夢の再現は、日本として絶対に避けなければならない。現に、中国を勝者として認めた「ヤルタ会談」体制は、国連における安全保障理事会の常任理事国の特権体制として今も維持されている。いくら日本が常任理事国入りを画策しても、この「ヤルタ」体制が存続するかぎり、日本の希望は実現する見込みがなさそうである。
他方、日本が中国と提携して米国に対抗する、あるいは、日本が中国の市場を独占するといったシナリオは、日本にとって都合がよいが、米国はこれを認めないだろう。もし、日本が主導して「東アジア共同体」構想から米国を排除するならば、米国が容認しないことは明白であろう。
このように、日中米の三角関係は、歴史的にみれば、複雑で微妙な状況が続いている。最近日本人の論評には、米中接近の動きをみて、「日本は外される」と一喜一憂するのが多い。米中の表面的な動きをとらえて一喜一憂するのはそろそろ卒業した方がよさそうである。結局、今後日本としては、情勢の推移をみながら、適当に三角関係のバランスを図っていくしかない。日本がコウモリの知恵をうまく発揮しつつ、この微妙な三角関係を安定させていけば、日本のみならず、東アジア地域全体の安全と発展に寄与するだろう。
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