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2010-01-21 00:00
言論規制は“小沢全体主義”の萌芽
杉浦 正章
政治評論家
民主党政権の“小沢擁護”は、検察当局への圧力に加えて言論規制ともいえる言動に発展し始めた。テレビ報道で所管閣僚が憲法で禁ずる“検閲”的発言をすれば、党内は組織的に検察への圧力をかけ続ける。言論出版妨害事件で世論の袋だたきにあった公明党の未熟さをほうふつとさせる。またウオーターゲート事件で政権の内部リークにニクソン政権がワシントンポスト紙に弾圧を加えたとは聞かない。日本の民主主義が問われる問題での露骨な政権内部の動きは、やはり“小沢全体主義”への萌芽(ほうが)と受け取らざるを得ない。
こともあろうに電波行政を所管する総務相・原口一博が、報道規制ととれる発言をした。「小沢氏の関係者への取材で分かった」などと言うテレビ報道に「『関係者』という報道は、何の関係者なのか分からない。検察の関係者なのか、被疑者(の関係者)なのか。そこは明確にしないと、電波という公共のものを使ってやるのは不適だと考える」と述べたのだ。真っ向からの報道批判だ。この発言は憲法21条の「言論出版その他一切の表現の自由は保障する」と「検閲はこれをしてはならない」に明らかに抵触する。今朝の読売新聞はトップ記事に堂々と「関係者」をつかっている。取材源の秘匿は報道の自由を維持するための前提条件とも言える基本中の基本だ。所轄大臣がそのイロハも知らないとは恐れ入る。官房長官・平野博文も同調しているが、政府高官たるものが小沢へのごますりもいい加減にすべきだ。原口はちょっとした政治家だと思っていたが幻想だったか。
70年、公明党は自党に批判的な言論出版にことごとくクレームを付けた。原口のように新聞・出版の文章上の表現にまで踏み込んで報道機関を批判して抗議した。公明党との関係を重視する自民党幹事長・田中角栄がこれを一部バックアップ。筆者もいた記者会見で屋山太郎に追及されて、「つぶやきを聞いて、おせっかいを焼いた」とさすがに田中も退散。当時創価学会会長の池田大作が公式に謝罪し、同党存亡の危機を免れた。民主党の状況判断の稚拙ぶりはその公明党そっくりだが、より悪質なのは背景に秘書が3人も逮捕された政治家個人の擁護の姿勢が見られることだ。電波行政に“君臨”してNHKやテレビ会社に生殺与奪の権力を持つ総務省の大臣が、その立場の重さをわきまえない発言だ。
また「捜査情報漏洩対策チーム」、「石川議員の逮捕を考える会」、検察当局が反対する「取り調べ可視化」法案など、検察の“リーク”へのけん制がひどい状況になってきた。読売社会部長の溝口烈の記事によると、かつてある検事総長がリークの批判に対して「検察が本当にリークしたらどんなものか見せてやりたい。悔しくて眠れない」と述べたと言うが、今の検察幹部も同様であろう。リークと批判する民主党幹部は、取材の形態が全く分かっていない。日本で調査報道が本格化した原点はウオーターゲート事件でニクソンを辞任に追い込んだワシントンポスト紙にある。これが田中金脈、ロッキード事件の調査報道へとつながったのだ。調査取材とは9割9分独自取材で得た情報を、最後の1分だけ検察に確認するような取材であって、口開けてリークを待っているような取材ではさらさらない。まさに「キリで鉄板に穴を開ける取材」(溝口)なのだ。筆者もワシントンの現場にいたが、ウオーターゲート事件をディープスロート(FBI副長官・マーク・フェルト)に取材したボブ・ウッドワードらも同様の取材だった。マーク・フェルトから「それではまだ不十分」「それでいい」の“合図”だけをもらったのだ。
現在の小沢疑惑取材も紙面を読む限り同様の取材が続いていることが分かる。これを最高のスポークスマンである官房長官が批判してはいけない。政権が問われているのは自浄能力があるかどうかなのであり、おのれの非を他に転じて日本の民主主義を危うくするような言動は慎まなければならない。
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