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2010-01-13 00:00
外国人参政権法案で民主党内はばらばら
杉浦 正章
政治評論家
国論を2分することが分かりきっている外国人参政権法案の国会提出を、民主党幹事長・小沢一郎が自らの主導で決めたのはなぜか。各紙が指摘しているような選挙対策か、公明党を自民党から切り離すためなのか。いずれの要素も含まれないわけではないが、これらの読みは皮相的で、大きな読みを外している。最大の動機は、自民党による民主党分断回避という組織防衛の側面が濃厚なのだ。したがって、小沢一郎は、恐らく永住外国人に地方参政権を付与する法案をごり押ししてでも通そうとはしないだろう。むしろ前向きのポーズを取りつつ、後ずさりしてゆくのではないか。政治家の心理を読むには動機が何かをまず見極める必要がある。ニュースの流れを注意深くフォローしていれば容易に分かる。11日の政府・与党首脳会議で唐突に小沢が法案提出方針を決めたのは何故かと言えば、簡単だ。答えは3日前、8日の朝日新聞の1面トップにある。
「外国人参政権に14県議会反対」の見出しが躍っている。政権交代後に自民党主導で県議会で行われている巻き返しだ。朝日は参院選に向けて自民党が民主党との違いを際立たせるためだとしている。かつて賛成だった県議会が、7県も反対の意見書の議決に転換しているのだ。「保守」を掲げる自民党総裁・谷垣禎一が、民主を揺さぶるためにじわりと打った一手だ。民主党は県連レベルでは、ばらばらで揺さぶりやすいのだという。谷垣は全定数の49.6%と自民党がまだ圧倒的な優勢を保っている県議会レベルでの反撃の基軸を外国人参政権に置いたのだ。県議会での反対の意見書可決はさらに進むだろう。朝日の独自調査の報道は、民主党への警鐘の意味があり、小沢はこれに乗ったのだ。小沢の懸命の巻き返しは法案提出を既成事実化して地方の動揺を抑えようという意味合いが大きい。組織防衛の側面が大きいのだ。
民主党には県議レベルでまだ8%の議席しかない。意見書可決の流れを食い止めるのは大変だろう。これを裏付けるように自民党幹事長・大島理森は1月12日「各県議会で数多く反対の意見書が出ている。そういう声を尊重しながら議論をしていかなければならない」と述べている。県議会活用だ。元気がない自民党にしてはうまいところに目をつけたものである。民主党政権側は慌てて小沢が手を打ったにもかかわらず、11日の首脳会議から意見が割れている。官房長官・平野博文が「党の方は大丈夫か」と質したのに、参院議員会長・輿石東が「やりたくないのは政府じゃないのか」と切り返す場面がそれを物語る。その後総務相・原口一博は「法制化はさらなる検討が必要というのが結論」と発言している。原口が小沢の意向に逆らった形であり、度胸のいる発言だ。だいいち閣議決定に持ち込めるかも問題だ。民主党閣僚の中にも反対意見があるし、国民新党の金融相・亀井静香は「参政権を得たい人は帰化すればいい」と真っ向から反対している。
外国人参政権問題は読売と産経が反対の社説をかねてから掲げており、国論は2分する傾向にある。参院選対策で在日本大韓民国民団(民団)などの支援が期待できるというが、国民感情からすれば逆効果だろう。筆者は失う票の方が大きいとみる。小沢自身が12日「自分たちの政府が提案する法律だから、党議拘束というより、その認識を持って各人が行動する」と述べている。事実上党内分裂を恐れて、党議拘束はできないということであろう。早くも後ずさりし始めたことになる。衆院選マニフェストから参政権を外したのも党の亀裂を恐れたからに他ならない。外国人参政権問題は韓国、北朝鮮、中国とそれぞれに利害の対立する極東情勢を背景にしており、実施すれば他国の影響が内政にまで及ぶことになりかねない。明らかに時期尚早とみるべきであろう。
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