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2010-01-05 00:00
既成事実の重さに押しつぶされるな
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
位置エネルギーとは、ある位置を占めて存在する、という事実自身の持つエネルギー、換言すれば重さのことだが、「そこにある」「既に存在してしまっている」という事実がいかに大きいものか、痛感させられることが多い。
例えば全国70カ所で赤字を垂れ流している「かんぽの宿」だ。そもそもの経緯は、保険加入者の福利厚生を図るため、という冗談のような理屈で発生している。要は郵政省(当時)のお役人の道楽と天下り先が野合して出来上がった怪物だが、これが一旦は一括してオリックスに売却することになったのはご承知の通り。それが売却価格が不当で、プロセスが不明朗だと、あの鳩山総務相が横槍を入れて、一旦白紙に戻る。民主党政権になったから今度こそは再度ご破算で郵政をスリム化するのだろう、と思っていたら、豈図らんや事業継続なのだと言う。郵政の事業多角化は結構だ。しかし、多少の訓練期間をおくにしても、あの巨大な貯蓄額を見れば、国債を買うしか能がないという運用のノウハウから攻めるのが王道というものだろう。一体郵便局が旅館業にダボハゼのように食いつくことに、どれほどの比較優位があるというのだろうか。もうすでにそこに存在してしまっているのだから、という位置エネルギーの大きさを改めて認識することになる。日本航空に対する融資枠拡大、つまり存続を前提とした施策というのも、これに類する。
もっと悪い例は今回の公益法人制度改悪だ。関係者に意見を聞けば、十人が十人これは悪法だ、こんなことでは官益法人をのさばらせるだけで、民間公益活動には百害あって一利無しだ、と答える。ところが法律が現に制定されて、公益認定なるプロセスが始まってみると、これまで批判的だった論客も鳴りを潜め、それどころか「どうしたら新法の下で公益認定が取れるか」というコンサルタントに豹変したりする。「泣く子と地頭には勝てぬ」という位置エネルギーの凄まじさを感じさせられることしきりだ。法律が出来て一年が経つのに、二万六千ある公益法人の中で新しいプロセスに乗っかろうという組織はまだ数百しかないという事実が「無言の抵抗」を如実にあらわしていると思うのだが、肝心の民主党も、目先の天下り先退治に一生懸命で、根っこのところにある制度の問題に気配りがない。出来てしまった法律の位置エネルギーがそんなに大きいとは思いたくないが、日米安保や憲法まで見直そうという意気込みの割には、鳩山さん、足下がいかにも覚束ない。
「国民のための政治」という美辞麗句なら、だれでも思いつく。何が国民のためになるか、どんな位置エネルギーを否定するのが国民のためか、という具体策がない限り、綺麗ごとだけを言っていても始まらない。自民党も、オカネの話で敵失を待つのではなく、自らの50年の治世の反省に立って、具体的な提案の数々で民主党を追い込めない限り、再生の道など夢のまた夢だ。
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