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2009-12-14 00:00
(連載)中国マクロ経済政策の方向性2010~2016年(3)
関山 健
東京財団研究員
現在の中国の戸籍制度では、農村住民を短期の労働力として都市部へ受け入れる一方、彼らの都市定住を認めないという「半都市化」政策を行っている。その不安定な身分がゆえに、彼らは低賃金に抑えられ、都市部で住宅を購入することもできず、積極的な消費も行えない状況にある。そこで、この戸籍制限を徐々に緩和し、農村住民の都市定住を促進することによって、個人消費の拡大を図ろうという考えが中国の政策立案者の間で広まっている。実際、こうした考えに基づき、今月の「中央経済工作会議」でも「中小都市や都市部で戸籍制限を緩和する」との方針が示されたという。
一方で、低賃金労働者としての「農民工」は、労働集約型産業の競争力を支える原動力であるし、そもそも6億人以上いる農民に比して、都市部のキャパシティは依然として不足していることから、その受け入れは漸進的なものとなろう。具体的には、都市部で既に安定的な職に就いている農民籍の住民や土地収用により都市部への転居を迫られた住民などから都市戸籍の取得を認めていくようだ。農村戸籍から都市戸籍への転換を促進したとしても、都市部に住居を入手することができなければ、彼らが新たな消費者群として育っていくことはない。
しかし、現在都市部の不動産価格は庶民の手の届く価格ではなくなっている。「2010年中国経済形勢分析予測」(社会科学文献出版社)によれば、2009年の住宅価格対世帯年収比は、全国平均で8.3倍に達する見通しであり、特に、農民工にとっては住宅価格対世帯年収比が22.08倍、農村世帯にとっては都市部住宅価格対世帯年収比が29.44倍にも上るという。全国全世帯の85%はマイホームを購入するのに十分な収入がないのが現状であり、今や住宅を購入できる層は既に住宅を持っており、これから住宅を必要とする層には、手が届かない状態なのだ。そこで、中国政府は、供給面において都市部の低・中所得者用住宅の価格引き下げを模索し、需要面において農民工の住宅購入資金確保の道を拡大することを考えている。
農民工に住宅購入資金を確保させるために最も有望と考えられるのは、農地や農村宅地の使用権転売だ。周知のとおり、社会主義国家の中国では全ての土地が公有であり、企業や個人は土地の使用権を貸与されているだけで、自由な売買は制限されている。2003年3月に施行された「農村土地請負法」では農民が農地を譲渡できると規定されており、2008年の中国共産党第17期中央委員会第3回総会では農地使用権譲渡解禁の表明が期待されたが、いまだ完全には実現していないと見られる。今後、農民工や農村住民の都市定住を促し、新たな消費者群として育てていくために、農地使用権譲渡の完全実施は避けて通ることのできない改革だと言えよう。(つづく)
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