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2009-12-03 00:00
試練の時期を迎えた「東アジア共同体」論議
石垣 泰司
アジアアフリカ法律諮問委員会委員
本年もあと僅かの日々を残すのみとなり、東アジア地域における地域協力に関する主要フォーラムであるASEAN首脳会議、ASEAN+3首脳会議、東アジア・サミット、APEC閣僚・首脳会議等一連の公式行事は終了したが、大學、シンクタンク、新聞社等主催の個別の関連テーマに関するセミナー、シンポジウム等は引き続き開催され、様々な論議が続けられている。振り返って気付きの点を記してみたい。
第1に、「東アジア共同体」論議は、鳩山政権の対外政策における1つの柱として位置づけられたこともあり、わが国内外で新たな注目を浴びることとなった。その結果、わが国国内は勿論、米欧、アジア各地でこれまで東アジア地域やアジア太平洋地域における地域的統合の動きに殆ど関心を持っていなかった多くの識者、政治家、研究者、ジャーナリストが、新たに積極的に論議に参加するようになったことが特筆される。これらの新規論議参入者は、従来からの経緯や蓄積とは無関係に、そもそも論からスタートし、「この地域における共同体構築は非現実的、論議は無意味である」と一刀両断的に強く指摘する向きも少なくなく、推進論者と消極論者のギャップが拡大する傾向すら見受けられつつある。
第2に、これまで、ASEAN+3(日中韓)の13カ国政府間には、東アジア共同体の構築はASEAN+3の枠組みをベースとしつつも、これに豪州、インド、ニュージーランドの3カ国を加えた東アジア・サミットの地域的枠組み(ASEAN+6)も有力な選択肢としてあわせ検討を続けていくべし、とのほぼコンセンサスが出来ていたが、鳩山総理の米国を何らかの形で是非参加せしむるべしとの主張や豪州ラッド首相のアジア太平洋共同体提案により、共同体構想の検討対象としての地域的枠組みが、厳密な意味での東アジア地域からアジア太平洋全域に拡大していく兆候がでてきた。
第3に、上記2の地域的拡大とともに、これまで東アジア共同体構築の推進論者が将来の「共同体」の姿として念頭においていた、ある程度緊密な地域統合の実体を備えた共同体の構築は、実際上困難となり、「共同体」とは名ばかりの第2のAPEC的な地域協力組織づくりになってしまう危険も現実化しそうな様相が見え始めている。
第4に、東アジア共同体構築に向けての取り組みは、当初ビジョン・グループという地域の少数の識者グループの提言よりスタートしたところ、今後は関係諸国政府間のファースト・トラックにおける協議・交渉が益々重要となるが、セカンド・トラックにおける論議も、前者の論議の方向性を見定め、促進化を図る意味合いにおいて、その重要性を減じることはないであろう。以上を要するに、「東アジア共同体」に関する取り組み・論議は、目下、これまでにない試練の時期を迎えているということであろう。
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