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2009-11-26 00:00
G20の相互監視の動きに蒼ざめるIMF
村瀬 哲司
龍谷大学教授
昨秋の世界金融危機ぼっ発以来、IMFが脚光を浴びている。本年9月末までの1年間に、対外経済面の困難に陥った欧州、ラ米、アジアの18カ国に対し、総額1584億ドルもの金融支援を実施・約束した。IMFの資金基盤強化も進められ、5000億ドルを超える資金貢献を、先進国は相対の融資あるいは新規借入取極め(NAB)負担金の形で、中国などBRICsはSDR建て債券購入の形で表明した。本年8月には2500億ドル相当のSDR(特別引出権)が1981年来初めて新規配分された。また、中国人民銀行の周小川総裁が、SDRを超国家的な準備通貨として育成し、IMFがその管理にあたるべきと提唱したのは記憶に新しい。
だが一方で、米国から欧州に広がった危機に対し、あらかじめ警鐘を鳴らせなかったこと、その結果、多くの加盟国がIMF支援受け入れを余儀なくされたことに対し、IMFは内心忸怩たる思いであったに違いない。さらに99月のG20ピッツバーグ首脳会議は、「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」を立ち上げることに合意し、これを受けて11月G20財務相・中銀総裁会議は、政策の「相互評価」の協議プロセスを開始した。この決定と動きに対して、心あるIMF幹部は蒼ざめたことであろう。
IMFの主要課題の一つは、国際通貨制度の安定的な運営のために、加盟国の政策運営を監視することである。そのために毎年多くの加盟国といわゆる4条協議を実施している。IMFは経済・政策監視を改善すべく、今日まで外部専門家の意見聴取や機構改革など多大な努力を払ってきた。上記G20の動きは、IMFのそれらの努力のみならず、存在意義そのものに疑問を投げかけるものと受け止められよう。用語は、注意深く「監視」(surveillance)を避けて「相互評価」(mutual assessment)を使っているが、意味するところは同じと考えられる。要は、IMFには任せられないから、G20として別途の枠組みを立ち上げ、独自に相互監視・評価を行う動きである。
アジア危機に際してIMFは、経済・政策監視とその延長線にある金融支援のコンディショナリティーについて、多くの批判を受けた。その後の反省と改善の努力にも拘わらず、今回は世界規模で危機が発生した。EUは整備された相互監視制度を持っているが、バルト・東欧諸国の危機を防げなかった。経済・政策監視の難しさは、予防的診断の難しさそのものに加え、主権国家の経済的内実と政策に関わるという内政干渉の限界にあろう。G20の新たな枠組みは、未来志向的な目標を持つという意味で、IMFの枠組みを超えると考えられるかもしれない。従って独自の「相互評価」が必要との論理であろうが、誰が携わるにせよ、うまくいくという保証はない。
翻って東アジアを見れば、経済レビュー・政策対話(ERPD)の重要性はようやく認識されたものの、事務局の設置場所など具体化の動きは遅い。相互監視は多くの困難を孕むがゆえに、実効性を確実なものにするためには、IMFなどのグローバルな機関に任せることなく、地域に根ざす自らの機構を育てることが不可欠である。
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