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2009-11-20 00:00
小沢強権政治で議会制民主主義の危機
杉浦正章
政治評論家
借入金返済猶予法案の強行採決の意味するところは、民主党幹事長・小沢一郎による強権政治時代のまぎれもない幕開けだ。政策面では表面への浮上を避けてきた小沢が、国会運営でその全ぼうを見せ始めたのだ。これだけ国民の賛否が割れる法案を、前例のない短時間の論議で採決に持ち込む。戦前の大政翼賛会でも行われなかった問答無用の採決を、ためらいもなく行う。今後わずか1時間しか審議していない日本郵政株式売却凍結法案など重要法案はもちろん、通常国会における来年度予算・同関連法案も強行するのだろう。国会改革を標ぼうしながら、論議を尽くすという議会制民主主義の根幹を、小沢は無視している。
小沢政治の基本は、我慢しないことだ。我慢できないことと言い換えた方が良いかもしれない。心臓病の持病が影響している、という専門家もいる。つまり意識してか、無意識のうちにか、自らの体をかばって、結論を急ぐのだ。「30日が会期末。それまでにきちんと法案をあげよ」と国対に大号令を発して、発破をかけ、まず手始めの強行採決だ。返済猶予法案は借り手、貸し手の双方にモラル・ハザードを招く恐れが指摘されている。融資の焦げ付きを国が肩代わりする制度であり、結局親方日の丸の対応ができるからだ。中小企業の窮状は救わなければならないにしても、徳政令で行うことへの国論は割れている。郵政・金融担当相・亀井静香が発言すると銀行株が下落したのが象徴している。外国資本の日本売りを招く可能性もある。
その重要法案をたった2日間、合計8時間の論議で採決とは、小沢の問答無用路線も極みに達した。もちろん背後には狙いがある。それは早くも息切れし始めた首相・鳩山由紀夫の救済と、自らの疑惑隠しであろう。鳩山は「故人献金」問題、2008年に株売却で得た所得を税務申告していなかった問題、資産報告書などの記載漏れなど、政治資金規正法や脱税疑惑が浮上している。加えて内政・外交で食言が続き、新聞論調も厳しさを増してきた。このままでは何が起きるか分からない。一方、小沢自身も新聞に西松建設疑惑のみならず「小沢氏側に1億円提供、水谷建設首脳」(東京新聞)といった贈収賄につながりかねない疑惑も生じている。会期を延長などしようものなら、野党の攻撃で高転びに転びかねない局面だ。ここはいったん国会を閉じて、疑惑隠しと態勢の立て直しを図る必要に迫られたわけだ。
小沢は強行採決について「昔は重要法案採決まで3泊4日、5泊6日もあった」とうそぶいたというが、前政権までは少なくとも論議は尽くした。小沢は予算編成についても「1か月程度遅れてもどうってことない」と越年編成も認める発言をしているが、これは明らかに数を頼んで通常国会でも予算や関連法案の採決を強行する腹だ。そこには衆院議席308議席獲得のおごりがある。小沢の“進撃”に出る幕のない鳩山は、採決強行に対して「国民の皆さんの為を思いながら、できるだけ早くと言う気持ちで行動している」と述べたが、もう口癖の「国民の皆さんのために」は聞き飽きた。「国民の皆さん」には1中小企業の事業の失敗のために血税を使うことへの異論もある。議会制民主主義の危機を回避する方が国民のためだ。
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