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2009-11-11 00:00
政権直撃の“3大発言”を分析する
杉浦正章
政治評論家
★「キリスト教も、イスラム教も、排他的」寡黙な男がたまに雄弁になると、こういう発言をする。民主党幹事長・小沢一郎が「全日本仏教会」会長の松長有慶に述べたものだが、発言内容を子細に調べると、小沢の無知がなせる集票のための“こびへつらい”であることがよく分かる。「キリスト教も、イスラム教も、排他的だ。排他的なキリスト教を背景とした文明は、欧米社会の行き詰まっている姿そのものだ。その点、仏教はあらゆるものを受け入れ、みんな仏になれる、という度量の大きい宗教だ」と言い切っている。言い逃れの出来ない発言だ。この発言を松長が即座にいさめずに喜んでいたら、これも宗教家として首をかしげるところだろう。それはともかく、票集めのためには、仏教界にまで手を回す、なりふり構わずの小沢の姿が浮かんでくる。要するに、一方の宗教を批判して、一方を持ち上げるという発言の根幹は、こざかしい政界の駆け引きが、そのまま宗教界で通用すると思った淺知恵にある。小沢は、自民党が公明党と組んで以来、仏教界が自民党支持から離反し始めたところに目をつけ、仏教界会長の同党への講話を依頼したもので、会長は応じている。何の利得があるかは知らぬが、僧侶が国政に首を突っ込むと道鏡、ラスプーチンのごとく国が乱れる。ろくなことはない。小沢もせいぜい“友愛教”にいそしむレベルが無難ではないか。キリスト教徒の票が逃げることは間違いない。
★「鳩山首相は、まるで夢見る少年のよう」ジャーナリスト・櫻井よしこが講演で述べた。外交デビューの時、国連で鳩山由紀夫は中国国家主席・胡錦濤に東シナ海のガス田問題に関して「いさかいの海から友愛の海にすべきだ」と述べたが、おそらく胡錦涛は面食らったに違いない。中国外交にとっても冷厳な交渉課題を、きわめて情緒的表現で持ち出したからである。百戦錬磨の胡錦涛は内心「しめた」と思っただろう。このお坊ちゃんを活用しようと思ったに違いない。国家の利害が衝突している水域で、「友愛」で外交が進むという判断が、指導者として甘い。そこを櫻井が突いたのだ。櫻井は「国際政治は自国の利益を確保する存亡をかけた戦いであり、『友愛』の精神など通じない」とこき下ろした。鳩山も、昔の少女雑誌『少女の友』のように、いつまでたっても「夢見る少女」のような大きな瞳のおばさんに「夢見る少年」とは言われたくないだろうが、もっともだから仕方がない。
★「今やっていることは、小さな無駄を削って、大きな無駄を作ることかもしれない。これが今の政権の本質だ」と元経済財政政策担当相・竹中平蔵がインタビューで批判した。いまや落ち目の小泉改革の旗振り役への風当たりが強い中で、竹中は“いけしやあ、しやあ”とあちこちに首を出して、憶面もない様子だ。鳩山としては、一番言われたくない相手だろうが、公平に見てこれも急所を突いている。新政権に欠けている問題の最たるものは、経済・財政の中期ビジョンだ。成長率をどこに置くかの見通しすらない。だから行き当たりばったりの「群盲象を撫でる」ような状態である。第1次補正予算の3兆円削減も、政権の初仕事とばかりに“にっくき”自民党政権の予算削減に取り組んだ。マスコミもはやし立てたが、いまでは筆者が指摘したとおり、当面の景気へのマイナス要因との見方が定着している。「小さな無駄を削って、大きな無駄を作る」典型だ。95兆もの概算要求を出してしまって、今度はおのれの予算を削ることに精を出す、という愚を繰り返しているが、このままでは年内予算編成が危うい。小沢は「1か月程度遅れても問題ない」としているが、細川政権の「予算6月成立→政権崩壊」の図式が思い浮かばないのだろうか。それとも308議席で強行採決を繰り返すつもりか。羅針盤無き航海が続く。
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