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2009-11-05 00:00
民主党内閣の安保政策への米国識者の懸念
岡崎 久彦
岡崎研究所理事長
Far Eastern Economic Review の10月15日付ウェブサイトで、米AEIのマイケル・オースリンが、日本の民主党内閣の安保政策について懸念を表明しています。冒頭、政権成立前に民主党の安保政策に関与した山口壮議員の「ミサイル防衛の対ミサイル命中率は1%だ」という趣旨の発言をとりあげ、「山口氏には既にあまり発言力は無いかもしれないが、民主党の安保政策は掴み難く、その真意を読み解くには、こうしたヒントにも頼らざるを得ない」として、北朝鮮の核の脅威や中国の軍備増強という東アジア情勢の下で安保政策が重要であるこの時期に、民主党の安保政策の前途に不安を表明しています。
そして「日本がインド洋での補給活動を止め、防衛力近代化の努力を緩め、中国に接近、そして北朝鮮の核については、ミサイル防衛ではなく国連決議だけを頼るようになれば、ワシントンは、日米同盟を再検討しなければならなくなる」と言っています。これは、政権成立前の山口壮氏の発言を取り上げた思い付きの論文のようにも見えますが、オースリンが憂慮しているのは、日本が防衛力近代化の努力、とくにミサイル防衛を怠ることであり、それは年末の予算編成に向けて大きな実質的課題だと言えます。実は防衛予算については、民主党政権になったからというよりも、自民党政権時代以来ここ数年間の傾向が憂慮されます。
日本は、「隠れた成功物語」と言われた中曽根・レーガン時代の防衛計画が実を結んで、1990年代前半には核を除いて世界第2位の近代的海空軍を持つに到りました。しかしその後は、冷戦が終わり、米国もクリントン政権時に軍備縮小時代に入り、さらに、過去の投資によって日米同盟が東アジアで圧倒的な軍事的優位を保っていたことから、防衛努力が閑却されていました。そのため、日本の軍備は次第に老齢化し、更新を必要とする時期に来ています。つまり本来なら、新たな防衛計画大綱を作成し、次の目標と計画を定める時期に来ているのですが、まさに、そうした時に今回の政権交代が起こったわけです。
他方、中国は、1990年代半ば以降、驚異的な軍備増強に乗り出し、アジアの軍事バランスは年々脅かされるようになってきました。かつては、東シナ海で中国に対して圧倒的優位を誇った自衛隊の軍事力も、既にバランスが逆転したか、あるいは逆転は時間の問題という状況になっています。こうした時期に、恐らくは安保予算よりも国内予算重視と思われる民主党政権が誕生したのは、歴史の皮肉と言えます。日本の防衛関係者としては、防衛力更新の必要を指摘し続けるしかないでしょう。安保政策は長期的問題であり、日本が防衛力増強に踏み切るのが1~2年遅れても無意味ということはありません。
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