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2009-10-27 00:00
東アジア共同体構想がもつ大きなリスク
鈴木 馨祐
前衆議院議員
東アジア共同体に関する議論が急速な盛り上がりを見せている。確かに経済効果等を考えれば為替リスクを軽減し、ヒト、モノ、カネの流動性を高める点で、関税や通貨にいたる共同体の創設のメリットは高いと思われる。しかし同時に懸念も存在する。3点指摘したい。
産業構造、政治システムなどにここまでばらつきがある東アジア全域で、共通の通貨・金融政策と各国の経済財政政策の整合を果たして取れるのか。ドルとの連動性一つとっても、各国で幅が広い、今の国際間での経済依存度の状況を考えたとき、共通通貨の導入が果たしてどのような結果をもたらすのか、検証が必要である。また実際にFTA・EPA交渉の場においても直面するところであるが、ビジネス環境の共通化、すなわち知的財産権や法的基盤の観点からの一元化を、アジア諸国が受け入れるのかといった疑問も存在する。各国がおいしい部分だけをつまみ食いするような感覚であれば、共同体といったところで全く意味のないものとなってしまいかねない。そして、これが一番の問題と考えるが、共同体というものが持つ非経済的側面への影響、すなわち共同体創設が、政治、安保面にどのような影響をもたらすのかも考えられねばならない。
世界の地域共同体を考察すれば、大体はNAFTAのような圧倒的な一国がリードするタイプ、EUのようないくつかの主要国が中心となるタイプに分かれるといっていいだろう。MERUCOSURなどもEUタイプである。東アジア共同体がどちらの道をたどるか。少なくとも日本政府として、中国が圧倒的にリードする東アジア共同体に入るのだという感覚ではないに違いない。とすれば、形成するならば経済的なボリュームからも、日中両国を中心に主要国がリードするEUタイプとなる可能性が高い。ライバルであるはずの近隣のいくつかの主要国がなぜ共同体を形成するのか。うまくいっている事例にはかならず「共通の脅威」が存在している。EUであれば、当初はドイツを巻き込むことで戦争を欧州で起こさないという狙いもあっただろうが、長続きしている理由を一言であえて言うならば、それはまさしく米国、あるいはソ連の脅威の前に結束したということに他ならない。東アジア共同体における共通の脅威とは何か?中国が主要メンバーである限り、それはアメリカにならざるを得ないだろうし、逆に共通の脅威を持てなければ、共同体は長続きはしない。
EUが少なくとも長続きしている理由としては、アメリカという共通の脅威を持ちながらも、そのアメリカと価値観を共有し安保面での対立とはならないという環境に加え、EU全体での共通の価値観、かつてのローマ帝国あるいはキリスト教という共通の「戻れる」よりどころを、皆が持っているということも忘れてはならない。東アジアの環境とヨーロッパの環境、あるいは南米の環境は余りにも異なるという現実を我々は直視すべきである。しかもアメリカというパートナーがいて初めて中国の軍事的脅威から日本もアジア各国も守られているという現実を考えたとき、果たして日本にとって、あるいはアジア各国にとって、東アジア共同体が本当に長期的に見て有益なものなのか。拙速は禁物であろう。
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