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2009-10-13 00:00
ささやかれる「鳩山大不況」の到来
杉浦正章
政治評論家
川柳で言えば「父と子が手当で生きる大不況」てとこか。子供手当をもらったはいいが、父親が失業しかねない「鳩山大不況」が、永田町・霞が関でささやかれている。最大の原因はこの不況期に鳩山政権がまだ“野党”をやっていることだ。責任ある政権のていをなしてこないからである。恨み重なる「自民党政権成敗」の補正予算切りはがしに精を出すあまり、景気対策など眼中にないからだ。経済・財政・景気をどうするというビジョン・ゼロのまま政権の座につき、一揆の打ち壊しをやっているようなものだ。輸血で何とか息をしている景気に、その流れを止めて「3兆円切った」と威張っていて何になるのか。
いわば身内から「鳩山不況」の声が政権発足前から出されている。民主党の経済ブレーンの早大教授・榊原英資が総選挙で民主党圧勝直後に「公的需要がかなり減少し、このままでは何年かたつと『鳩山不況』と呼ばれる可能性がある。第2次景気対策を打つべきだ」と述べたのだ。確かに民主党は、ばらまき政策と敵失攻撃だけで政権を取ったが、自ら「革命」と公言するとおり「破壊」ばかりで、「創造」がない。揚げ足をとって自分のビジョンに欠ける野党時代そのままなのである。ここから「補正3兆円削減→GDP0.4% 引き下げ→景気二番底へ」の構図が見える。金科玉条とするマニフェストを実行しさえすれば、景気もよくなるし、国民生活も潤うと信じ込んでいる。補正予算も削減するだけで何に使うかも明かでない。通常国会冒頭で補正を組んでそれに回すとなれば、補正実施を“遺恨”で遅らせただけのマイナス効果になりかねない。
財政・経済の実態はどうか。税収は今年度で46兆の見込みが6兆以上落ち込みそうな状況だ。にもかかわらず財務相・藤井裕久は暫定税率の廃止を早々と打ち出した。わざわざ2.5兆円もの財源を手放すのである。ここに見えてくるのは「暫定税率廃止→税収2・5兆落ち込み→環境税創設→企業の負担著しく増大→不況定着」の構図だ。暫定税率廃止に税収の落ち込みを加えれば10兆近い収入減になりかねない。赤字国債の発行を「麻生以下」に抑えられるかどうかも疑問になってきた。鳩山の得意満面の
CO2の25%削減はどうか。「CO2の25%削減→製造業のアジア移転不可避→税収・雇用の減少→財政破たん」の構図だ。加えて子供手当や高速道路無料化が、内需を拡大し、景気に即効的なプラスが生じると見る学者・専門家も少ない。
折から中国、インド、シンガポールなどは完全に景気が底を打ち、V字回復の活況を呈している。アジア地域が世界経済の牽引役となりつつあり、米欧が輸出促進へと動いている。日本もぼやぼやしていられない時に、政権は「外需依存から内需依存へ」などというピント外れのお念仏を唱えている。なぜか金融相・亀井静香が狂ったように執着するモラトリアムも、実施に移されるようだが、たとえ銀行の義務規定を外しても、重大な欠陥が見られる。モラルハザードだ。「モラトリアム実施→貸し手・借り手にモラルハザード→倒産続出→公的資金で補助→国民が血税で負担」となる。このようにどれ一つ取っても、景気逆行の構図ばかりである。これで「鳩山不況」、またの名を「友愛不況」にならないですむだろうか。鳩山内閣は“野党”から脱して、責任ある経済・財政運営に大きくかじを切るべきだ。JR東海会長の葛西尊敬之が読売新聞の紙面でCO2削減策に強く警鐘を鳴らすと共に「有識者は時流の勢いに沈黙すべきでない」と述べているが、もっともだ。もはや安っぽい民放テレビのニュースキャスターやコメンテーターの歯の浮くような政権礼賛に耳を貸しているときではない。
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