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2009-10-08 00:00
首相のの「公約は時間で変わる」発言
杉浦正章
政治評論家
「マニフェストは、うそも方便だった」とは言わぬが、首相・鳩山由紀夫の弁明には恐れ入った。普天間飛行場の辺野古移設容認の理由として「時間というファクターによって変化する可能性を、私は否定しない」と述べたのである。この発言は“名言”として政治史に残るだろう。マニフェストでは「在日米軍再編について見直しの方向で臨む」としてきた政権公約の柱を、「時間で変わる」と言い切るなら、そのほかにも「時間が変える」ものは、いくらでもある。既にインド洋の給油にしても、財源不足から来る赤字国債の発行にしても、民主党政権が公約を転換せざるを得ない問題がひしめいている。この際「修正マニフェスト大全」を発行してはどうか。
現実の政治・外交というのはこういうものであることが、遅まきながら分かって来たようである。外相・岡田克也はクリントンとの会談で普天間基地の問題を「民主党は賛成してこなかった問題もある」とおそるおそる言及したのに対し、クリントンから「現行計画の実現が基本で、重要だ」とぴしゃりとはねつけられ、それ以来静かになった。防衛相・北沢俊美も沖縄を視察してから移転の難しさを表明するようになった。だいたい沖縄県知事や、移設先の名護市長が容認しているものを、社会主義のような観念論で事を運ぼうとしても無理なのだ。
県外や海外移転という荒唐無稽(むけい)な代替案も成り立つわけがないではないか。ミニ政党の身分をわきまえず社民党の福島瑞穂が強く反発しているが、閣僚の担当外の問題に関する発言を野放しにすべきではない。しかも首相の発言を批判すれば、連立解消を意味することになる。鳩山の統率力が問われている。「時間で変える」べきものに、インド洋の給油中止問題がある。国連でも英国首相・ブラウンが鳩山に給油についてただしたのに引き続き、外相ミリバンドから岡田が給油継続を求められている。アメリカが英国を“使って”日本に圧力をかけるという高等戦術である。
給油については、賢明にも防衛政務官・長島昭久が国会の事前承認を経て給油継続を図る見解を表明しており、岡田も「継続を絶対ノーとは言っていない」と軟化している。北沢だけが「延長という選択肢はあり得ない」と福島と同じ立場だ。米国防長官や大統領の来日を控えて鳩山は、この北沢・福島の“旧社会党共闘”を何とかしなければならない。給油問題は自民党政権が打ち出した絶妙の策だ。費用がそこそこ、自衛隊員の人命への損傷もない。代替案はこれまでのところろくなものはない。この給油問題も、不可避となった赤字国債も、行き詰まった八ッ場ダムも、金融不安と日本売り加速のモラトリアムも、鳩山はリーダーシップを発揮して「時間というファクター」で解決してしまえばよいのだ。「マニフェスト教条主義」は現実政治に直面して無理があるのだ。
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