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2009-09-28 00:00
新政権下での官僚の「豹変」に期待しよう
山下 英次
大阪市立大学大学院教授
進藤榮一教授は、9月14-15日の両日の2回にわたって、鳩山新政権の外交方針に対する国内の懸念の大合唱に反対する旨の論考「『外交の継続性』という神話」を本欄に寄稿されたが、私も全く同感である。民主党政権がマニフェストで掲げているように、「より対等な日米関係」を求めるのは、まさに時代の要請であり、わが国として当然のことである。これまで通りの従属的な関係でよしとするというような日本国民として全く誇りのない意見を相変わらず持っている人たちがいまだにこれほどまでに多いのはむしろ驚きであり、また嘆かわしい限りである。
新政権の鳩山由紀夫総理は、明確に日本が中国とともに、東アジア共同体の構築といずれは域内共通通貨の創設を目指している。一番詳しく論じているのは、月刊誌『Voice』(PHP研究所)の9月号への寄稿文「私の政治哲学―祖父・一郎に学んだ『友愛』という戦いの旗印」(pp.132-141)であるが、その要約版の英文が8月27日付け『ニューヨーク・タイムズ電子版』のOP-ED欄に掲載された。この要約版(1,600 words余り)は、新聞記事としてはかなり長文であるが、原文の内容を正確に反映したものであり、編集作業に当たった米国側を批判する余地はないと私は考える。
この英文を読んだ一部の米国人が懸念を示しているようであるが、それを日本側のマスメディアが例によって過剰に反応し、民主党政権下で米国との関係が悪化するのではないかとの懸念が国内で溢れている。現在は、世界史の節目であり、グローバル・ガヴァナンス構造の変化(世界の多極化)を見据えた鳩山論文の基本認識は、全く正しい。日本のマスメディアは、もっと成熟しなければならない。アメリカには、多少心配させておけばよいではないか。
いずれにせよ、鳩山総理は、アジア地域統合の必要性を明確に認識し、なおかつ公言した最初の日本の首相である。これまでは、日本の官庁は、アジア地域統合に対して熱心とは全く言い難かったが、新政権の下で大きく変貌してもらいたい。官僚は、自らは大きく変わることができないのが宿命である。政策の方針を大きく変えることができるのは、国民からの投票によって選ばれた政治家である。すなわち、方針の大転換ができるマンデートを官僚は国民から与えられていないが、政治家は与えられている。
今回は、日本で初めての本格的なマニフェスト選挙となったと、私は理解している。今回は、まさに、政策転換について、国民のマンデ-トが下りたのである。官僚には、政治に指導される形で、これまでの認識を大いに改めてもらいたいものである。振り返ってみると、これまで、どの官庁であれ、アジア地域統合について正しく認識し、しかもその推進に熱心に取り組んでいる現役官僚にまだお目にかかった記憶が私はない。今後は、良い意味で大いに「豹変」した後の官僚諸氏にお目にかかるのを楽しみにしたいものである。
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