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2009-09-22 00:00
(連載)新政権は麻生政権の対露政策の経験に学べ(3)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
しかし、経済関係が発展したにもかかわらず、ロシア側の言う領土問題交渉の発展はまったく見られず、むしろロシアでは対日強硬論が強まった。そしてついには、「平和条約不要論」さえ生まれた。つまり、平和条約がなくても経済関係はどんどん進展する、との論だ。「日本はロシアとの経済関係発展を望んでおり、北方領土返還要求は国内向けにすぎない」という認識がロシア側で強まった。経済関係発展の努力が、逆効果を生んだのだ。このようなロシア側のアプローチに対して、日本側が不誠実さを感じるのも当然である。日本側はロシア側の「創造的アプローチ」を期待して、この5月には盛りだくさんの経済協力協定を結んだ。これも、単に日本側の「お人好し」を示すだけの結果に終わった。
したがって、「領土交渉が進展しないと、太平洋地域でのパートナーシップの関係も進めることはできない」という麻生首相の発言は、ロシア側の不誠実な態度への当然の反応である。同時に、これまでの日本の対露アプローチへの反省から出たものでもある。総選挙後に生まれる次期政権の首相、外相に提言したいことがある。それは、対露政策の策定にあたっては、日本政府の苦い経験から生まれたこの反省を是非ともじっくりと吟味して欲しい、ということだ。日本のお人好しのアプローチをロシア側は喜ぶとしても、内心日本を侮っているということも、しっかり認識してほしい。
もう一つ注目すべき点は、メドベージェフ大統領が平和条約交渉に当たっては、プーチンの基本姿勢を引き継ぎ、「あくまでも日ソ共同宣言を基礎とする」と主張したことだ。しかも、ロシア側のこの宣言の解釈は、2島の引き渡しで最終決着というものだ。今日のロシアの客観的状況を考えると、メドベージェフ大統領がプーチン路線を越えることはできないということは、われわれが常に指摘してきたことでもある。
その背景には、経済危機、大国主義の高揚、シロビキの影響力、微妙なメドベージェフ・プーチン関係等がある。メドベージェフの言う「創造的アプローチ」は日本側に求めているだけだ。ロシア側は、2島引き渡しで最終決着という解決案を日本側が絶対に受け入れないということを承知の上で、この提案をしている。つまり、「56年宣言を基礎に」と主唱している限り、2島さえも返還する必要がないと考えているのだ。(つづく)
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