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2009-09-21 00:00
(連載)新政権は麻生政権の対露政策の経験に学べ(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
首相は、昨年11月のリマにおける首脳会談で「日露間では政治関係と経済関係のバランスが欠けており、経済関係のみが発展して、平和条約交渉が一向に進まない」と強い不満を述べた。日本側のこの批判は正論である。しかし麻生首相は口では不均衡を批判しながらも、行動が伴わなかった。つまり、このような批判をしながら、今年5月のプーチン首相訪日時には、日本政府は原子力協定など盛りだくさんの経済協力を約束した。結果的にロシア側に対して、「日本は事実上、領土問題を棚上げした」「4島返還要求は国内向け」との間違った認識を持たせてしまった。私はこの言行不一致の日本政府のアプローチを批判した。
麻生首相の首脳会談での発言は、ある意味で、かつて日本が放棄した「政経不可分」の立場でもある。この背後には、結果的に領土問題を取り残して経済関係のみが進展した、近年の歪んだ日露関係への反省がある。そしてこのアプローチは、ロシア側に平和条約問題への真剣な取り組みを促すためには、避けられないものでもあった。このような結論に至る経緯を振り返ってみよう。
日本は1980年代の末に、北方領土交渉が進展しないと経済協力を進めないという「政経不可分」の立場を放棄した。そして、政治関係と経済関係を共に平行して発展させるという「拡大均衡」の立場に移行した。橋本、小渕、森首相時代には、対露支援を含め、ロシアとの経済関係発展に積極的な姿勢を示した。その後の小泉首相の「日露行動計画」(2003.1)は、実質的には平和条約問題にこだわらずに、さらに経済協力を前進させる意思表示でもあった。安倍首相も「極東・東シベリア地域における日露間協力強化に関するイニシアティブ」(2007.6)で前向きの姿勢を示した。ロシア側がこれらを歓迎したのは当然である。プーチン時代には、サハリンの資源開発での協力が進み、2005年以後、トヨタを始め日本企業の積極的な対露進出が目立つ。
一方ロシア側は、平和条約問題解決のためには経済関係その他を発展させる必要があるとして、領土問題解決の前提条件が経済協力だという立場を常に強調してきた。つまり、ロシア側の観点から、「政経不可分」の立場にこだわったのだ。近年の日露経済関係の発展は、日本側がこのロシア側の要求に誠実に(愚直に)応じてきた結果でもある。(つづく)
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