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2009-09-04 00:00
(連載)ロシア側は日露関係をどのように捉えているか(2)
斎藤 元秀
杏林大学教授
7月の日露首脳会談をまえにして、プーチン・メドヴェージェフ双頭政権にとっての最大の関心事は、「新たな独創的で型にはまらないアプローチ」について具体的な説明を首脳会談の席上で行わない場合、どのような反応を日本側がするのか、日露関係の険悪化を避けるためには、どのような布石を打つべきか、ということであった。こうした点をめぐって、ロシア側は多角的な検討を行ったようである。そこから出てきた結論は、「独創的な」新提案をしない場合には、日本側は当然反発するであろうが、おそらく制裁措置はとらないというものであったようだ。
こうした判断のもとに日露関係の険悪化を防ぐため、ロシア側は次のような対応策をとった。(1)日露首脳会談の席上では「新たな独創的で型にはまらないアプローチ」について「機が熟していない」と主張して具体的な提案を行わない。しかし、同アプローチについて「引き続き検討する」と述べて、日本側の批判をかわすとともに、平和条約交渉を継続すると日本側に伝える。(2)ビザなし交流についても継続の方針を伝える。そして、さらに(3)北東アジアの安全保障問題に関しても、引き続き日本側と協議する姿勢を示す。
イタリアでの日露首脳会談で、メドヴェージェフ大統領は「日本側がロシアに対し非友好的政策をとった結果、領土問題を解決する環境が損なわれた」と主張し、「独創的」な提案を行うのを避けた。それに対し麻生首相は、「ロシア側に平和条約問題について具体的な進展を図る用意がないのであれば、アジア太平洋地域におけるパートナーとしての関係を構築することにはならない」と述べて反論した。
だが、麻生首相は、「(領土問題と経済協力という)双方の関心事を並行して進めてゆく必要がある」と語り、ロシア側と厳しく対峙するのを避けた。麻生首相は「日露行動計画を放棄する」とか、「極東・東シベリアにおける日露間協力強化に関するイニシアチブをご破算にする」とは言わなかったのである。日露首脳は、アジア太平洋地域の安全保障問題については、日米露で協議することに合意した。こうした「成果」を得て、メドヴェージェフ大統領は安堵したにちがいない。領土問題の進展がなく、日本側から見れば、日露首脳会談の結果は落胆以外の何物でもないが、ロシア側はうまく乗り切ったと考えているのではあるまいか。(つづく)
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