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2009-09-04 00:00
東アジア共同体と鳩山次期政権への期待
石垣 泰司
アジア・アフリカ法律諮問委委員
東アジア共同体についての内外の熱意の低迷が取り沙汰される中で、民主党がそのマニフェストに「東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する」と明記したことは、注目される。鳩山政権発足後、具体的にどのような外交的取組みがなされることになるのか、興味がもたれるとともに、期待するところも少なくない。
民主党マニフェスト自体には、東アジア共同体に関連しては、(1)中国、韓国をはじめ、アジア諸国との信頼関係の構築に全力を挙げる、(2)通商、金融、エネルギー、環境、災害救援、感染症対策等の分野において、アジア・太平洋地域の域内協力体制を確立する、(3)アジア・太平洋諸国をはじめとして、世界の国々との投資・労働や知的財産など広い分野を含む経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の交渉を積極的に推進する、(4)核兵器廃絶の先頭に立ち、北東アジア地域の非核化をめざす、といったことが羅列してあるだけで、民主党政権が目指す東アジア共同体の具体像はまだ見えてこない。他方、米国で論議を呼んでいる鳩山論文では「地域的な通貨統合やアジア共通通貨の実現を目標とする」といった考えも述べられているという。東アジア共同体とアジア太平洋協力枠組みとが渾然一体と認識されていて、まだ入口の議論の段階にあるようでもあり、アジア共通通貨へのプロセスについての具体的ビジョンは、不詳である。
以上の点を含む基本的な点については、新政権発足後、鳩山総理の施政方針演説や外交演説、国連総会演説の中で自ずと明らかにされていくことになると思われるが、これまでの自民党政権の東アジア地域協力への取り組みより一段と積極的な姿勢を示したいとすれば、10月23-25日タイ・プーケットで開催予定といわれる本年のASEAN+3および東アジア・サミット(EAS)の首脳会議の機会を捉えてこれを表明することが自然であり、どのような新たなイニシャティブが打ち出されることになるのか期待されるところである。但し、その場合にも、東アジア共同体の理念は、今日すべての地域関係国に共有されており、その構築に向けての取り組みがすでに進行中のものであるので、わが国としてとくに突出して指導力を発揮して全体を牽引していくといった意欲を示す必要はなく、わが国の国力に相応しい役割を今後とも積極的に果たしていくとの決意と実際的提案を表明するというのが適切ではないかと考える。
民主党には、東アジア共同体評議会(CEAC)の顧問・有識者議員の一人となっておられる羽田孜元総理はじめ、東アジア共同体の理念についての深い理解者が少なくないので、鳩山政権の対東アジア共同体外交政策もこれまでのわが国政府の取り組みとの連続性・有機的関連をもったうえで、さらに発展・深化が図られ、地域全体から評価されるものとなるよう期待するものである。
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