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2009-09-03 00:00
鳩山の「反米」は、確信犯か?
杉浦正章
政治評論家
民主党代表・鳩山由紀夫が米大統領・オバマとの電話会談で「日米同盟は基軸」を確認したが、これは歴代政権が繰り返している「お経」のようなもので、問題のすべては各論にある。外務省が胸をなで下ろしているというが、まだ早い。鳩山の言動をフォローしていると、明らかに「反米」とも言うべき米国離れの思想がある。付けたりの発言ではなく、一貫して“確信犯的”に、それなりの理論を構築した発言を続けてきている。原点は「常時駐留なき安保」の発想であろう。北東アジア情勢の現実と全くかい離しているこの発想をもつ首相が、本当に大きく方向転換できるかどうかは、疑問だ。民主党最大の弱点が、早くも露呈してきた。
ニューヨーク・タイムズが掲載して、米国内で問題となった論文の要点は、「冷戦後、日本は米国主導の市場原理主義、グローバリゼーションにさらされ、人間の尊厳が失われている」、「金融危機は、米国流の市場主義経済が理想という思考の結果だ」「イラク戦争の失敗と金融危機は、米国主導のグローバリズムが終わりつつあることを示唆している」などである。世界の指導者の中でこれだけあからさまに米国批判をした例は、最近ではニカラグアの大統領オルテガくらいのものだろう。この論文は鳩山の過去の発言からの一貫した流れである。2006年に幹事長時代の鳩山は、韓国釜山市の東西大学で講演し、同党の外交・安全保障政策について、「米国とは距離感、間合いを取り、その分、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と友情の濃い関係をつくっていく」と述べ、はっきり米国離れを宣言している。
さらに重要なのは、持論としてこれまで繰り返し続けてきた「常時駐留なき安保」論である。昨年岩国市内での会合でも、日米安保のあり方について、「必要な時だけ米軍に来てもらって、日本を守ってもらう。そうでない時は日本の領土に基地を設けなくても構わないのではないか。私の持論だが、米軍の『常時駐留なき安保』という議論を言っている」と述べている。「常時駐留なき安保」論は、かって民社党が主張してきたものだが、論理的な破たんが大きく、党自体が消滅した。安保条約の根幹を否定する構想であり、緊張の度合いを増す北東アジア情勢と逆行していることは言うまでもない。こうした「反米的」思想を原点に持つ鳩山が、米国内の反発にさらされて、始めてその論理的な欠陥に気づき始めていると言うのが実情であろう。
米国内では「米国が世界を搾取しているという思想は、マルクス主義と同じだ」という批判まで出ている。また当然ながら、鳩山を反米的と見る知日派も多い。その理由が過去の鳩山発言にあることは言うまでもない。鳩山は過去の発言との整合性と現実のはざまで動きが取れなくなる可能性もある。社民党などとの3党連立協議も、あえて共通政策に盛られなかった外交・安保政策の扱いで壁にぶつかっている。インド洋での給油支援やソマリア沖の海賊対策に関して、自衛隊の海外派遣に強く反対する社民党とどのような形で折り合いをつけるのか、という問題だ。外交安保ばかりは、玉虫色では治まるまい。相手のあることだからすぐに対応を迫られる。社会党の首相・村山富市といえども、就任早々には日米同盟堅持の大原則を声明して、柔軟路線に転じている。鳩山はまず自衛隊海外派遣でその姿勢が試される。
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