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2009-08-31 00:00
(連載)FTAは地域統合の本筋ではない(2)
山下 英次
大阪市立大学大学院教授
また、東アジア諸国は、域外諸国との間のFTA締結にもかなり熱心であり、特に、アジア太平洋で、オープン・エンド型のFTAのネットワーク作りが進行している。TPP(Trans Pacific Partnership)と呼ばれるアメリカとP4(ブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポール)の間でFTA交渉を開始することが、2008年9月に宣言された。また、今年11月からは、これにオーストラリアとペルーが加わることが決まっている。さらに、米国が提案しているAPECの21カ国ベースのFTA(FTAAP)の構想もある。
このように、アジア太平洋で、広域のFTAのネットワーキングが進んでおり、木村福成慶應義塾大学教授(兼東アジアASEAN経済研究センター・チーフ・エコノミスト)によれば、こうした動きが次第に世界的に広がっていき、究極的には、現在暗礁に乗り上げているWTOの多国間貿易交渉(MTN)を乗っ取る可能性もあるのでなかいかとしている。筆者も、そうした可能性はあるかもしれないし、また、あったとしたら、それはそれで良しとしたいと考える。
しかし、こうしたFTAに関する一連の動きは、自由貿易を世界的に広げるという観点からは好ましいが、率直に言って、地域統合とは全く別の話である。FTAは、地域統合の本筋では全くないのである。地域統合というのは、そもそも、外的ショックから自分たちの地域を如何に守るかというのが、その目的である。
したがって、「開かれた地域主義」(open regionalism)という概念それ自体が語義矛盾であり、全く実体を伴わないものである。「開かれた地域主義」で地域統合を推進することなど、全く不可能である。地域統合は、「閉ざされた地域主義」(closed regionalism)以外にはありえない。EUも、メルコスールもGCCも、すべからく閉ざされた地域主義に他ならない。
今次米国発グローバル金融経済危機で、われわれアジアは、外的ショックに晒されており、しかもそれに対して無防備であることを再び悟ったはずである。アジアも幻想は捨て、「閉ざされた地域主義」により、関税同盟を経て、共同市場を目指すべきである。(おわり)
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