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2009-08-17 00:00
米人記者釈放を手放しで喜んでいてよいのか
花岡 信昭
拓殖大学大学院教授
ときに産経の1面に違和感を覚えることがある。8月6日付朝刊など、その典型だ。クリントン米元大統領の電撃訪朝によって釈放された米人女性記者2人が、家族と抱きあって泣いている写真を2枚使っている。「よかった、よかった」と、お涙ちょうだいの扱いでいいのかどうか。他紙よりも格段に「よかった度」が高い。国際面では、クリントン元大統領と、この2記者が所属するテレビ会社の共同経営者であるゴア元副大統領と、いっしょの写真を使っている。こちらなら、まだわかる。
この2人の女性記者は中朝国境地帯の取材中に、北側につかまった。経緯は十分にはわからないものの、こういう神経をつかわなくてはならない場所で北側につかまるというのは、ジャーナリストとしては大ミス、大ポカだ。北朝鮮当局は「懲役」12年の判決をくだしたが、2記者は監獄に入れられるのではなく、招待所(いわゆるホテル)に収容されていた。北側が「人質外交」を展開しようとしていたことが、この点からもよくわかる。
くどいようだが、この2記者は、危険な地域であることを承知のうえで、取材中につかまったのである。日本人拉致事件とはまったく異なる。報道の自由など、どう叫ぼうとも通用しない相手だ。2記者には「崇高な」取材目的があったのだろうが、とんでもない失態をやらかす羽目になった。そこをまず恥じてもらわないといけない。クリントン元大統領が乗り出し、金正日とすれば、アメリカの最高ランクの要人の訪朝を引き出したことで、大きな外交ポイントを稼いだ。
国連安保理決議によって、北朝鮮関連の貨物検査を徹底させるなど、日干し作戦が進行中なのだ。アメリカはその先頭に立っていたはずなのだが、2記者拘束によって、対北外交戦略は大きく揺らいだ。そのことの責任を2記者はどう考えているのか。北朝鮮が6カ国協議の枠外でアメリカとの直接交渉を実現させたことの意味合いを考えれば、「無事帰国できた。よかった、よかった・・・」というレベルの話ではないはずだ。
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