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2009-07-25 00:00
人民元と日本円の協調の可能性について
山下 英次
大阪市立大学大学院教授
今年5月25-26日、中国の長春(旧満州国の首都新京)の吉林大学で、『グローバル金融危機下における東アジア通貨金融協力:人民元と日本円の協調は可能か?』と題する日中国際シンポジウムが開催され、出席してきた。日本からは、アジア開発銀行研究所(ADBI)の河合正弘所長や私を含め合計6名の専門家、中国側からは中国社会科学院(CASS)世界経済政治研究所の何帆(HE Fan)所長助理をはじめ9名の専門家が出席し、2日間にわたって開催された。
この会議は、吉林大学経済学院教授で中国世界経済学会副所長の李暁(LI Xiao)先生と私が企画したものであるが、この種のテーマでの日中間のシンポジウムは初めての試みではないかと理解している。現時点では、このテーマはかなり野心的に過ぎる、もしくは先走り過ぎているとの印象を持たれる方が多いと想像するが、このテーマでの両国間の政府間の対話や交渉が持たれる時期がいずれ必ずややってくることになるであろう。
基本的には、円と人民元の本格的な協調は、人民元が自由交換可能通貨になることが前提であり、そこまで行くにはまだかなりの歳月を要するであろう。しかし、例えば、アジア通貨単位(ACU)の実現なら、やろうと思えば今すぐにもできるのである。通貨・金融の専門家以外は、有識者でもほとんどの人が誤解しているが、ACUはアジア共通通貨(”the Asian EMU”もしくは”AEMU”)構想とは全く異なる。ACUは、AEMUどころか、その手前にわれわれが目標とすべきアジア版EMSから見てもその遥か手前に位置するものである。
今年5月3日、バリ島で開催されたASEAN+3財務大臣会議で、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)のマルチ化(CMIM)を今年中に機能させることが決まった。また、CMIMでは、域内経済サーベイランスを強化するために、事務局に当たるサーベイランス・ユニットの設置を予定している。ADBとASEAN事務局が中心となって、設立の準備をしているようである。域内サーベイランスには、本来、為替レートも対象とすべきである。そのためには、各国通貨の乖離の程度を何らかの手段によって把握する必要がある。すなわち、何らかの基準をベースに、各国通貨の乖離の程度を測定する必要がある。その基準となるのがACUである。
欧州のECUのように、ACUも域内通貨のバスケットによって構成される必要があり、各通貨のウェイトを決めなければならない。それが政治的に非常に難しい問題となっていたのであるが、今年のASEAN+3財務相会合で、CMIMの資金総額1,200億ドルの各国別シェアが決定された。日本32%、中国32%(ただし中国28.5%+香港3.5%)、韓国16%、ASEAN 20%である。このバスケット・ウェイトで、ACUを創設すれば良いのである。やろうと思えば、これは例えば、来月からでも実現可能なはずである。これが、日本円と人民元の協調の第1歩となるであろう。
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