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2009-07-24 00:00
東京12区からとん走した小沢の舞台裏
杉浦正章
政治評論家
ここまで気を持たせながら、民主党代表代行・小沢一郎が東京12区からの出馬を見送ったのはなぜか。小沢は国替えしない理由について、「もう自分が立たなくても勝てる」と公言しているという。しかし小沢の本音は、都議選分析の結果12区に出ても公明党代表・太田昭宏に勝てそうもないと悟って、とん走したに過ぎない。単純なことだ。もっとも民主党は、「外交右傾化路線」の中で総選挙後、社民党ではなく公明党との連携もオプションの一つに考慮し始めていることは間違いない。「東京12区は空けておけ」と出馬を示唆し続けた小沢の翻意について、公明党幹部が「直接対決で結構。バカにするな」と漏らしている。小沢が国替え中止で、早くも同党に対して選挙後をにらんだ“秋波”を送り出したと受け取れる発言をしているからだ。確かに小沢が12区から立候補すれば、政治的には公明党と創価学会に対する全面戦争の口火を切ることになる。解散時点まで態度を表明せず、公示前になって自分の岩手4区から出馬するというのだから、明らかに12区での立候補も選択肢の中に入っていたのだ。自らが刺客となって大田を落とせば、民主党が勢いづくと言う判断だったのだ。
しかし、小沢は都議選の結果をみてがく然としたに違いない。政権与党に対して暴風が吹き付けたような選挙で、公明党は候補者を立てた20選挙区で23人が全員当選し、5回連続の完全勝利を果たしたのだ。マスコミの事前の調査でも2、3人落選という予想が出ていたにもかかわらずである。勢い余って自民党から支援要請を受けた19人のうち、12人を当選させている。あらためて創価学会の動員力の強さを思わせる選挙だった。焦点の12区は、足立区と北区だが、公明党は小沢立候補の場合の前哨戦と位置づけ、すさまじいほどの動員をかけ、全力投球をしたのだ。その結果得票率は、足立区が20%を超えた。有権者全体の中で候補者がどれだけの信任を得ているかを示す目安となる絶対得票率でも、足立、北の両区は10%を上回っているのだ。党代表の大田が立てば、創価学会のメンツをかけた死にものぐるいの選挙戦が展開され、さらに上積みとなるだろう。自民党ももちろん全力を挙げて大田を支援する。
いくら追い風だと言っても、小沢が立てば、落選の危機である。おまけに世論調査で小沢は、西松献金疑惑で説明責任が果たされていないとする声が、80%に達している。東京は岩手と違ってマスコミに動かされやすい土壌を持つ。むしろ新人の方が民主ブームの風を帆いっぱいにはらめる可能性があるのだ。世の中、小沢の行動となると裏のウラを読みたがるが、今度の国替え中止ばかりは、単純に見た方が良い。小沢は逃げたのである。小沢の大田への“ちょっかい”もあって、民主・公明両党の関係は、総選挙を通じて一段と悪化することが予想される。しかし民主党が選挙後に政権を取った場合は、話は別だ。自民党との連立が維持できなくなれば、公明党が一度味わった“政権の味”に復帰したくなったとしても、おかしくない。政権の座と野党とは、天と地の差があるからだ。
公明党が自民党に殉じて「自公連携」を続ける意味も薄くなる。公明党の弱みである元委員長・矢野絢也の国会への参考人招致問題や、場合によっては創価学会の池田大作の国会喚問問題も封じられる。逆に民主党にとっては、インド洋の給油容認などで連立対象の社民党との関係がぎすぎすしており、外交・安保路線でも現有衆院議席7の社民党より31議席の公明党の方が魅力的である。公明党と連携または連立した方が、国会はスムーズにゆく。自民党にとっては裏切りになるが、本来政党の関係というのは情緒的なものではない。即物的なものなのである。今後、小沢がそこに目をつけてくさびを打ち込もうとすることは間違いない。「公明党の太田代表との直接対決は、避けたい」と漏らしているのが、その証拠だ。重要なのは、公明党への接近は社民党へのけん制の意味も持つ点だ。
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