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2009-07-15 00:00
(連載)北朝鮮の核問題と北方領土問題(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
日本とロシアあるいは日本と中国の間では、経済関係は発展したが、残念ながら政治的な信頼関係が構築されているとは言えない。ロシアの指導者や専門家たちと国外の専門家たちが討議するヴァルダイ会議に何回か参加したことがある。2005年9月に参加したとき、ロシアの専門家から「中露間では国境問題が大騒ぎすることなく解決したのに、日露間では長年大声で論争しているが、何故解決しないのか」と訊かれたことがある。私は次のように答えた。
「その理由は、残念ながら、ロシアが日本を中国ほど重視していない、あるいは中国ほど恐れていないからである。もちろん、ロシアの対日アプローチを劇的に変化させる手段をわれわれは知らないわけではない。それは、日本が核保有国になることだ。そのための経済的、技術的ポテンシャルもわが国にはある。といっても、われわれは核大国になることを望まない。しかし、もしロシアが政治的に日本を軽視する態度を続けるならば、わが国に核保有論が台頭する可能性はある。そのようにならないためにも、ロシアは平和条約問題の解決をもっと重視するべきである」と。
日本における核保有論の台頭という問題は、北朝鮮の核・ミサイル開発によって、より現実味を帯びてきた。わが国の世論がこのような方向に変化しないためにも、また北朝鮮の核開発を阻止するためにも、日本とロシアの政治的信頼関係の構築がきわめて重要である。今日、日露間の信頼関係を阻害する最大の原因は、北方領土問題あるいは平和条約問題である。そして残念ながら、日本人の70%以上は、ロシアに対してネガチブなイメージを有し、ロシアへの不信感を抱いている。つまり、平和条約問題を解決して日露間の政治的な信頼関係を構築することは、単に日露2か国の間の問題ではなく、北東アジア全体の安全保障と安定にかかわる問題なのである。
北方領土問題に関する国際法上の問題、あるいは歴史的な問題については、専門家の間ではすでに議論し尽くされている。両国の認識は異なっており、議論は平行線となっている。問題解決のためには、最終的には両国首脳の政治的な決着以外にない。私は専門家として、北方領土問題に関するロシア側の論理や歴史認識は十分理解している。しかし、それを理解した上で、なおかつ真の信頼関係を構築するために平和条約問題の解決を訴えてきた。現在は、北朝鮮問題を解決し、北東アジア全体の安定を実現するためにも、この問題の解決がぜひ必要だ、ということが明確になってきたと言える。(おわり)
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