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2009-07-07 00:00
三木内閣末期に似てきた今の政局
杉浦正章
政治評論家
今の政局を見て思い出すのは、自民党記者クラブのキャップとしてつぶさに見た三木内閣末期の政局だ。1976年9月は、やはり今と同じで、任期満了選挙か、解散か、が最大の焦点だったが、三木武夫の宿敵田中角栄の影響下にある15閣僚が解散詔書への署名を拒否して、任期満了選挙に追い込んだ。選挙は敗北し、三木内閣は結局退陣せざるを得なかった。麻生太郎はどうか。造反閣僚の数にもよるが、基本姿勢は「自らの手による解散」であり、直感では反対閣僚が出れば元首相・小泉純一郎と同様に「罷免して解散」を選択する可能性が高い。解散は天皇の国事行為であり、形式上は、天皇が国会に提出する解散詔書によって行われる。それを政府が閣議で決定することになる。自民党内反主流が常に目をつけるのはここだ。
反三木勢力の挙党協は、三木を退陣に追い込むための田中戦略に基づいて、副総理・福田赳夫、外相・宮沢喜一、蔵相・大平正芳らが反対ののろしを上げた。これに対して三木は、官房長官・井出一太郎に閣僚の罷免手続きを検討させたが、反対閣僚が15人にも達して、罷免しきれなかった。結局野党に追い込まれる任期満了選挙となった。もう一つ対照的な例が、2005年の小泉純一郎の郵政解散である。参院での郵政法案否決を解散の理由にするという途方もない対応で、森喜朗などが猛反対。やはり反対の亀井静香が、農水相・島村宜伸に署名拒否を働きかけた。島村は署名を拒否して、辞表を提出したが、小泉はこれを認めず、島村を罷免、自ら農相を兼務して署名し、解散を断行した。
三木と小泉の決定的な違いは、反対閣僚の人数である。また負ける選挙か、勝つ選挙か、の違いもある。勝つ選挙なら反対しにくい。麻生の場合はどうか。置かれた立場が三木と似ている。大敗が予想される総選挙を控え、閣僚も内心浮き足立ち始めている。自分を総裁候補と思っている舛添要一や、選挙に弱い与謝野馨が微妙な発言をし始めた。都議選も敗北必至の形勢であり、自民党内は「麻生おろし」が加速する流れとなっている。問題は、派閥の領袖や、森喜朗や、参院の青木幹雄が、これに乗るかどうかだ。今のところ各派とも「鳩山献金偽装」のための解散先延ばしを主張しているが、「麻生おろし」のための先延ばしとは一線を画している。しかし反麻生勢力が解散を阻止するには、どうしても造反閣僚をテコにする必要があり、今後署名拒否をけしかける動きは強まるだろう。
マスコミの反応はどうか。何でもはやし立てて、きわどさが売り物の民放テレビに出る評論家やコメンテーターなどの浅薄な言葉を信用すると間違う。新聞も同じだが、「都議選前の解散」で間違え、「幹事長に舛添要一」で間違え、「東国原入閣」で間違え、このところ総間違えだ。そして自らの情報源の悪さを棚に上げ、全てを麻生のせいにしている。責任転嫁も甚だしい。しかし「麻生の手による解散」に関しては、意外なことに朝日新聞をはじめ推進論だ。もちろん、麻生が解散すれば自民党を大敗させられるという“深い読み”があることは言うまでもない。今朝7月7日の朝日社説でも、麻生おろしを批判し、「小手先の策は無理だ」と主張している。おそらく閣僚が署名を拒否すれば、罷免による対処を是認するだろう。加えて都議選敗北の後の麻生の立場は、恐らく「鳩山疑惑」解明との兼ね合いで、直後になるかどうかはともかくとして、目をつぶって解散への中央突破を図るだろう。したがって、造反閣僚が出れば、罷免するしかないだろう。「解散にはエネルギーが必要で、麻生にはその力がない」との“民放コメント”が流行しているが、解散など首相の決断次第だ。たとえ“ガス欠”でも解散は可能だ。
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