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2009-06-29 00:00
(連載)北朝鮮核開発問題の経緯と展望 (4)
関山 健
東京財団研究員
では、米国がミサイルによって北朝鮮の核開発施設を破壊すればよいかと言えば、事はそれほど単純ではない。もし北朝鮮の核開発施設を破壊するとすれば、北朝鮮は日本や韓国にミサイル攻撃などで報復する可能性がある。すなわち、北朝鮮の抑止力は、米国には遠く届かないとしても、米国の同盟国たる日本や韓国は人質に取られている状況にあると言える。この点、日本や韓国の国内世論は、北朝鮮の報復リスクを甘受してでも北朝鮮の核開発施設を破壊することを望む状況にはなく、米国にとっても経済危機とイラク問題への対応に忙しいなかで、極東を混乱に陥れるような手段を取る合理的理由は持ち合わせていない。
また、北朝鮮に対して天然ガスなどのライフラインを供給している中国が、同国に核開発断念を迫るべく制裁を強めるべきとする向きもあるが、実際には、中国に大きな期待をかけることは現実的でない。確かに北朝鮮の核開発は、暴発すれば中国東北部にも影響が及ぶ上、これに刺激されて北東アジアで核軍拡が進む恐れもあることから、中国にとっても大きな懸案ではある。しかしながら、北朝鮮に本気で制裁を加えて体制崩壊させれば、大量の難民が中国に流れ込むなど、その混乱の影響は深刻に中国へ跳ね返る。両者のリスクを比較考量すれば、中国にとって、北朝鮮の息の根を止めることも辞さないほどの強い働きかけは、合理的選択肢ではなかろう。
北朝鮮にしてみれば、米中ともに最後のカードを切る勇気を持ち合わせていない状況を見越して、核開発を急いでいるのだと考えられる。では、日本にとって深刻な脅威である北朝鮮の核開発を、我々は指をくわえて見ているしかないのであろうか。ここで、北朝鮮の外交目的を今一度思い起こしてみたい。北朝鮮にとって核開発は、06年当時から現在にかけて使い方が変化しつつあるとはいえ、自国の安全を米国に約束させつつ、国際社会への扉を開いて支援を得るための外交ツールであることに変わりはない。
しかしながら、この外交目的は今なお達成されておらず、それは仮に核保有に成功したとしても自動的に達成されるものではない。北朝鮮の外交目的が達成されるのは、米国が北朝鮮の威嚇外交に屈するか、北朝鮮が自らエスカレーションの階段を下りてくるか、どちらかのシナリオしかないのだ。したがって、残念ながら北朝鮮に今すぐ核開発を断念させる決め手がないのが現実である以上、日米サイドとしては、決して北朝鮮の威嚇外交に屈して妥協することなく、その強硬路線が功を奏しないというメッセージを有形無形に発し続け、北朝鮮国内情勢の変化のような事態冷却化のきっかけを待つほかないように思える。(おわり)
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