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2009-06-19 00:00
(連載)平和条約問題解決には「痩せ我慢」も必要(3)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
かつてわが国は、「政経不可分」という入口論を主張したが、ロシアが強くそれを批判し、政治関係と経済関係を均衡させて共に発展させるという「拡大均衡」論に政策を転換した。こうしてわが国は経済面での協力に前向きの姿勢を示したが、領土問題は一向に進展しなかった。現在ロシアは、逆の立場から「政経不可分」論を主張している。
今回、原子力という国家の安全保障が関わる極めて微妙な分野で日露協力の合意ができたことを、ロシア側は特別に注目した(『独立新聞』他)。国家の積極的な姿勢がないと、この分野での協力は成り立たないからだ。これを含めた、エネルギーその他の分野での協定や合意がどんどん進んでいる。つまり、日本政府は、一方で経済関係だけが進展していると不満を述べながら、他方では平和条約問題が前進しなくても経済関係を熱心に進展させて来たのである。
ロシア側に対してこれが意味することは、ひとつである。日本政府は、その意に反して「領土問題で日本政府は真剣ではない」というシグナルを送っているのだ。ここから、ロシア側には、4島返還要求は「国内向けだ」という暴論も生まれてくる。
国家主権という国の尊厳(安全保障と外交の基礎でもある)にこだわるのを「武士国家」とすれば、もっぱら経済面での利得を重視するのは「商人国家」と言える。わが国の当初の入口論は前者で、拡大均衡論は「武士国家」と「商人国家」を何とか両立させようとした苦心の作だ。しかし領土問題が進まなくても経済協力に精を出したため、結果的にロシアは、わが国を主権問題を軽んずる「商人国家」と内心見下すようになったのだ。ロシア側の報道ぶりには、わが国を見下している揶揄の雰囲気がよく出ている。
主権問題に対するわが国の取り組みの真剣さを示すためには、必要なときには「武士は食わねど高揚枝」ではないが、「痩せ我慢もできる」ということを示す必要がある。経済面その他で一時的に痛みを伴うかもしれないが、結果的にはそれが、国家や国民が尊厳を得る道であり、真の国家関係や経済を発展させる道でもある。(おわり)
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