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2009-06-12 00:00
ベトナムにおける反中国感情の再燃
細川 大輔
大阪経済大学教授
南シナ海の領有権問題で中国と対立するベトナムで、中部高原地帯でのボーキサイト採掘プロジェクトを巡り反中国感情が高まっている。この地域には推定埋蔵量約55億トンのボーキサイトが眠っているといわれ、開発資金と技術が不足するベトナム政府は、国営石炭鉱産グループに対し、適切な外国提携先を選定するよう指示していた。その一つダクノン省ニャンコーのアルミ工場は、中国アルミ集団が受注し、認可も取得、今年6月から着工を予定しており、実現すれば中国との象徴的な経済協力案件になるはずであった。
ところが、この開発から生じる致命的な環境汚染と、大量の中国人労働者が移住してくるとの恐れから、有識者を中心にプロジェクト推進への反対運動が拡大した。4月には共産党政治局が政府に対し、この問題を慎重に取り扱うよう異例の指導を行っている。中部高原は、ベトナム戦争以来戦略的地域であり、ここに中国が「介入」することによる安全保障上の問題を懸念したものとみられる。
一方、提携先の中国アルミは、6月はじめにオーストラリアでも反発を買っている。英豪系資源大手のリオ・ティントが中国アルミとの195億ドルにのぼる提携を撤回した。豪西部の著名な鉄鉱石鉱山の権益が、中国により取得されることに反対する世論を、豪政府が考慮したからだとされる。
中国ASEAN自由貿易地域の完成を来年に控え、中国はASEAN諸国と様々な経済協力構想を進展させている。また、資源開発を中心にオーストラリアとの関係緊密化が注目されてもいる。しかしながら、進展すればするほど中国への反発が高まっているのも事実で、中国の望むウィン・ウィン関係の構築は一直線には進まないだろう。
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