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2009-05-26 00:00
もはや避けて通れぬ「先制攻撃・核」論議
杉浦正章
政治評論家
ミサイル実験に次ぐ北朝鮮の核実験は、「敵基地先制攻撃能力」問題はもちろん、タブー視してきたいわゆる「核論議」が、少なくとも国会において冷静な議論の俎上に置く段階に入ってきたことを物語っている。北が核小型化に成功して、既にノドン・ミサイルに搭載可能となっている、との見方が米国防情報局(DIA)にあったが、今回の実験はその可能性をより強く証明している。首相・麻生太郎は外相時代に「核論議」必要論を説いている。問題は民主党代表・鳩山由紀夫だが、意外や意外、「核論議まで封殺するな」と言う立場を、過去に表明している。27日の党首討論で取り上げられるかは微妙だが、北の実験は総選挙を控えて、いずれは避けて通れない問題提起となるだろう。
核実験成功は、まず6か国協議の破たんを物語る。北はもともと「絶対出席しない」と表明しており、ミサイル実験も核実験も明らかに米国との2国間交渉狙いの意味合いが濃い。したがって安保理決議や日本独自制裁など“定食メニュー”をいくら提示しても、馬耳東風の対応だろう。だいいち独自制裁と言っても効果は極めて限定的だ。全面禁輸も事実上無意味だ。オバマ政権が裏で「回天の外交」を展開して、局面を打開できるかに、全てがかかってきていると言ってよい。
日本は、北の核攻撃に対しては日米安保条約の核の傘に依存せざるを得ない。有事の際に条約が機能するように日米対話の継続が不可欠だ。しかし北の核攻撃後に「安保条約が機能すると思っていた」では取り返しがつかないこととなる。2006年の第1回核実験後も、先のミサイル実験後も、日米首脳がこの問題を直接的に話し合った例を知らない。なぜ日本側から問題提起して、安保上の責務を再確認しないのかである。核論議是認論者の麻生が、第1回実験後に外相として「日本がなぜ核を持たないか、議論をしておいたほうがいい。議論は封殺すべきではない」と国会答弁しているのは、あきらかに“対米けん制”の意味を持つ発言だろう。盟友で政調会長だった中川昭一が「核の議論は当然あっていい」と発言したのに呼応したものだ。「核の傘」に冷戦時代と同じように全てを委ねて大丈夫かという議論は不可欠だろう。米国には北から1時間前に通告があったようだが、日本には米国から何の連絡もない。こういう体制でよいのかと言うことだ。
一方、鳩山は99年の代表当時、核武装をめぐる発言で防衛政務次官を辞任した自由党の西村真悟の問題に絡んで「核武装してもいいかどうかを国会で検討したらどうか、と言った瞬間にクビを切られるとなると、国会で核をもつべきかどうかなんて議論がなされなくなる。議題に乗せることすらしてはいけないという発想もいかがなものか」と述べ、核武装の是非を国会で議論すること自体は容認する考えを示している。麻生と鳩山が実は「核論議」是認論者であるとなれば、国会論議は堂々と展開されるべきものだろう。麻生が“仕掛ける”チャンスでもある。鳩山は窮地に陥るだろう。明らかに麻生は「核論議」問題をぶり返すかどうかをいま熟慮中に違いない。しかし、総選挙前という時点で取り上げた場合の利害得失が先行する情勢であることは確かだ。まず公明党が反対する。自民党内にも異論はでるだろう。しかし避けて通れる問題だろうか。
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「敵基地先制攻撃」については元首相・安倍晋三が5月25日「ミサイル発射基地を攻撃する能力について具体的に検討していくことは当然だ」と素早い反応をしている。産経新聞は、自民党国防部会が4月の北朝鮮弾道ミサイル発射を受け、(1)海上発射型の巡航ミサイル導入など「敵基地攻撃能力」の保有、(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃について政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めることの2点を、年末の防衛計画大綱改定に盛り込むよう提言することになったと報じている。北朝鮮の問題は明らかに外交交渉が行き詰まりを見せる中で、日本の防衛に大きな問題を投げかけている。全て国民の生命・財産にかかわる問題となってきている。異常な国から降りかかる火の粉を払わない国はない。一朝有事の備えは、安保条約だけに頼らず、日本独自でも検討がなされてしかるべきではないだろうか。
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