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2009-05-18 00:00
「岡田幹事長」で「小沢院政」色をどこまで消せるか
杉浦正章
政治評論家
誰が見ても不利なのに、民主党新代表・鳩山由紀夫は「小沢礼賛」を継続している。代表戦に勝った後も、「小沢さんのおかげでここまで民主党が強くなった」とテレビ番組で公言し続けている。小沢という男は、これほどまでに一本立ちの政治家を虜にしてしまう何かを持っているのだろう。それとも鳩山は、状況が読めない「音痴」の傾向があるのだろうか。民主党の評判を左右するメディアがなんと書いているか、を知らないわけではあるまい。ついには小沢を代表代行に“復権”させてしまった。それも選挙担当となれば、総選挙を控えて大変な党内権力を握らせたことになる。岡田克也を幹事長に据えて世論対策上のバランスをとったが、当面主導権は小沢が握ってゆくだろう。
なぜ鳩山が小沢離れが出来ないかといえば、小沢に田中角栄直伝のすばしっこさがあるからだ。小沢は、鳩山代表を実現することが出来た「早期決戦日程作成」の“陰謀”を始め、明らかに先を読む能力を学習したのである。早期決戦でなく、10日ほど選挙日程があれば、結果は岡田が追いついていた可能性が高い。加えて小沢は、「選挙区に精通しないで、政治家が務まるか」という田中の「教え」を忠実に守り、実行してきた経緯がある。故竹下登に次いで選挙区事情に精通している政治家とも言える。民主党の選挙対策の世論調査結果も、一人で抱えて、外に漏らさず、問題選挙区に手を打って、参院選挙に勝った。筆者も経験があるが、田中や竹下から細かい選挙区事情を説明され、意見を聞かれても答えることが難しく、冷や汗をかいたものだ。それほど選挙区事情に精通することは難しいのだ。
今回の民主党党首交代劇の裏にも、選挙に強い小沢と強くない鳩山の上下の構図がある。鳩山は、小沢に頼らざるを得ないのである。その鳩山が17日の民放テレビで、重要な秘密情報をぽろりとこぼした。選挙情勢調査を小沢が抱えて外に出さないことを指摘されて、「1月の調査は、270から80議席もあった。これを漏らしたら、たががゆるんでしまう。知られたら大変だから、小沢さんと私だけのこととした」と述べたのだ。まさにお坊ちゃま政治家・鳩山の人のよいところだ。270~80議席も取れると分かれば、一挙に民主党単独政権である。確かに外部には漏らせないことだろう。しかし、いま漏らしてくれたのは有り難い。謎が一挙に解けるのだ。小沢が続投に固執し続けたのはなぜか。鳩山が小沢を執拗(しつよう)にかばい、続投を支持し続けたのはなぜか。こうした疑問の原点が、民主党独自調査の数字にあったのだということが分かる。せっかく圧勝できるところまでもってきたのに、党首の座を譲れられるかと言うことだ。したがって、なぜ小沢を選挙担当の代表代行に据えたのかの意味が、ここに明白となる。
問題は、その選挙に強い小沢神話は、鳩山の心中にだけ健在であることだ。世論の流れは、小沢離れが政権交代へのキーポイントとする方向に変わりない。しかし鳩山は、政局問題に限らず、政策でも、小沢路線を踏襲してしまっている。責任政党としての最重要ポイントの財源論も、「無駄の排除で21兆円捻出(ねんしゅつ)」に固執している。これで子ども手当、農業者戸別所得補償などを実現しようというのだから、財務・金融・経済財政相・与謝野馨に「少し経理に知識のある人から見たら、噴飯ものだ」と指摘しされるのも無理はない。さすがの朝日新聞も「もっと真剣な姿勢を打ち出さなければならない」と5月17日の社説で批判した。この経済危機の緊急事態に、祖父鳩山一郎が理念に掲げていた「友愛」を持ち出したのも、古色蒼然の感はぬぐえない。生ぬるくて時代にマッチするキャッチフレーズとは言えまい。要するに、鳩山民主党は「ノー・チェンジ」なのである。岡田克也を幹事長に取り込んだが、小沢色は岡田で相殺しようという狙いだろう。「岡田幹事長」が「小沢院政」の印象をどこまで消せるかどうかだが、そう簡単ではあるまい。
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