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2009-05-11 00:00
天皇は「ハンコ押すヘソ」ですませていてよいのか
花岡 信昭
ジャーナリスト
NHKの「JAPANデビュー」第1回(4月5日放送)は、日台関係をめぐって意図的な偏向が目立つと問題化したが、2回目(5月5日)はあまり騒がれていないようだ。「天皇と憲法」というタイトルだが、NHKのHPによれば、番組全体の内容はこうなっている。
<日本が近代国家の骨格ともいうべき憲法を初めて定めてから120年。大日本帝国憲法は、プロイセン憲法などを参考に「立憲君主制」を採り、当時の世界からも評価されていた。しかし、19世紀帝国主義から第一次世界大戦を経てうねる時代の流れの中で、日本はその運用を誤り、立憲体制を瓦解させてしまう。一つは、議会を担う政党が党利党略に走って政策や理念を忘れ、軍部の肥大化を助長したことに原因がある。さらには、天皇を絶対視する思想が先鋭化し、統帥権を盾に取った軍部が政治を主導していったことが挙げられる。
國學院大學には、憲法起草者の法制官僚井上毅(いのうえ・こわし)が残した6千点を超える資料が保存されている。ドイツなど諸外国に残された資料も掘り起こし、どのように大日本帝国憲法が制定されたかを分析。さらに、政党政治の自滅と天皇絶対主義の国体論の激流を、これまで紹介されていない資料によって描き、大日本帝国憲法下の政治体制がどのように崩壊したかを検証していく。番組には、京都大学の山室信一教授、東京大学先端科学技術研究センターの御厨貴教授、評論家の立花隆さんの3人の論客が出演。>
そこで、天皇についての考え方は、それぞれ自由な言論が保障されているわけだから、何をどのように解説されても結構なのだが、どうにも気になったことだけあげる。この3人の論客のコメントだ。1人は天皇の国事行為をあげて、「ハンコを押す」という表現を使った。もう1人は「天皇は国のへそ」という言い方をした。合わせれば、「天皇はハンコを押すへそ」ということになる。さて、この程度の次元ですませていていいものかどうか。筆者あたりの感覚では、現憲法の象徴天皇の位置づけは、国家の統治形態として、きわめてすぐれたシステムではないかと感じている。天皇は「祈り」のために存在する。国家、国民の安寧を祈るのだ。万世一系の始まりは神話の世界なのだから、これほど神秘的で厳粛なものはない。
天皇の存在は、日本という国家の「かたち」そのものを意味する。これが日本人のアイデンティティーの源(みなもと)となっている。いわば、アプリオリな存在であって、主権在民といった概念との対比で論じるような対象ではない。だから、ざっくりした言い方を許してもらえば、憲法に天皇条項を盛り込んでいるのは果たして妥当か、という問題提起も可能だ。憲法に書いてある以上、これを改正することも可能ということになる。だが、天皇制を廃止するといった事態は「革命」そのものということになる。天皇は憲法を超えた存在なのではないか。イギリスは成文憲法を持たないが、書かれていないことで国民の大半が認めていることのほうが、はるかに厳粛な重みを持つ。そんなことをつらつらと考えた。
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